薬剤師は自分を磨くことに熱心で、日ごろから様々な勉強をしていますよね。
日夜勉強会に参加し、e-ラーニングを活用して隙間時間を学習にあて、自分の知識を高めていることかと思います。
その学習の成果が形となるのが、薬剤師の認定制度です。
しかしながら、この薬剤師の認定制度は、たくさんの団体がそれぞれの基準で認定を与えているため、質が伴っていないものも中には存在します。
そんな認定制度の必要性について、今回は言及していきます。
あや
きよみ
モンブラン
質の担保がされないまま薬剤師関連学会と認定制度の立ち上げが相次ぐ
かかりつけ薬剤師の申請にも研修認定薬剤師の資格が必要となり、薬剤師の認定制度はその数をどんどん増やしています。
2018年現在は30以上の団体が50以上の認定資格を発行しており、それも日に日に増えていっている状況です。
ただし、それらすべての認定資格が高品質で臨床応用できる技能を保証するものなのかといえば、疑問が残るのが本当のところ。
質が確保されないまま学会員の数を増やす為だけに作られた認定資格もあり、認定制度自体の必要性さえ疑問視される状況なのです。
団体ごとに認定の取得方法が異なり認知度が低い
現在の薬剤師認定制度がどれだけの数あるかご存知でしょうか?
がん専門薬剤師や糖尿病専門薬剤師など、歴史があるものに関しては認知度もありますが、急激に増加した認定制度の大部分が知られていません。
誰も聞いたことがないような認定資格を持っていたとしても、薬剤師としての職務にメリットが生まれることは少ないでしょう。
しかも、これらの認定制度は団体ごとに取得方法が異なっており、学会への登録だけで与えられる認定資格もあれば、長い実務経験を必要とするもの、資格取得のためのテストに合格しなければいけないものなど、様々存在しています。
認知度が低くメリットも少ない、難易度もまちまちで必要性を感じないような認定制度が、これだけの数必要なのでしょうか。
何のための認定かわからないものも多い
乱立した認定制度や認定している団体には、何のために立ち上げたのか疑問が残るものが多くあります。
同じような内容の団体・認定が複数並び、具体性のないその認定には、存在意義が見いだせません。
自分自身を磨くための機会が増えるという意見もありますが、薄い内容の資格を修得するための学習が、自己研鑽につながる可能性は非常に低いものでしょう。
資格認定ビジネスのカモにならないように!
結局のところ、認定制度・学会の立ち上げが乱立したことには、収入源として申請費用を集めるための魂胆が存在しています。
こういった資格を交付することによって収入を得る方法を資格認定ビジネスといい、認定するための手数料として数万円を徴収したり、テストの受験料、研修の受講料など、認定資格を餌にして金銭を巻き上げるシステムが作り上げられているのです。
認定資格を得ようと考えるのであれば、内容のしっかりとした中身が伴っているものを選んでいくようにしていきましょう。
厚生労働省でも、認定制度を整備するための指針を発表しており、内容がない団体や認定制度に関しては淘汰されていく可能性もあります。
簡単だからと飛びつくのではなく、自分のためになるのか、資格を取得してどう生かしたいのかを考え、資格認定ビジネスのカモにならないようにしていきましょう。
あや
モンブラン
きよみ
モンブラン
27団体のかかりつけ認定制度に限って全て同列の認定
学会の立ち上げが乱立し、認定制度も数多く生まれましたが、その中でも27団体に関しては、かかりつけ薬剤師制度に伴って薬剤師認定制度認証機構に認められた団体とされています。
これら27団体は独自に研修単位を発行していますが、それぞれ共通して申請に用いることができるようにされており、27団体のどれから受けた認定であっても、優劣なくかかりつけ薬剤師の申請に用いることができます。
一部の学会では、その学会独自の研修を受けていることなどの条件が付けられていることもあるため、もし希望の認定学会があるのであれば、しっかりと調べてから申請するようにして下さい。
薬剤師関連学会に優劣をつけることは難しいですが…
かかりつけ薬剤師になる為に認定薬剤師を取得するのであれば、認証された団体であればどこのものでも問題はありません。
それでも、27団体もあっては結局どこの団体で取得すればいいのか、悩んでしまう薬剤師も多いことでしょう。
基本的には、古くから薬剤師の生涯研修をサポートしてきた日本薬剤師研修センターや病院薬剤師会を活用することをオススメしています。
これらの団体は会員数も多く、研修認定制度以外の認定制度も複数扱っているため、将来的な薬剤師業務でのメリットも大きいと考えられます。
アメリカでは同一の第三者機関が専門薬剤師資格を保証
薬剤師先進国とも言えるアメリカでは、専門薬剤師を認定する団体を調査・分類する機関が作られています。
薬剤師の称号を整備して相関関係を明らかにする機関である「薬学称号制度協議会(CCP)」と薬剤師に認定を与える機関を評価・認証する「薬剤師教育認証協議会(ACPE)」の二つが、現在のアメリカで薬剤師の質を保証する機関として機能しています。
これらの機関は第三者機関であるため、中立な立場で制度を調査・評価・分類を行っており、その結果として薬剤師の社会的な信用を高める効果を持ちました。
アメリカでの専門薬剤師資格の種類
- 癌・化学療法学
- 放射線学
- 栄養薬学
- 精神科薬物療法学
- 薬物治療学
アメリカでの専門薬剤師は、非常に大きな権限を持っています。
各疾患に関するスペシャリストとして、薬物療法の提案やモニタリング、治療評価や患者対応のみならず、場合によっては処方権を委任されて処方箋を書いたり、用量・用法の決定権まで行っています。
日本でも同じような分野の専門薬剤師は作られていますが、法的な制限も合って大きな権限を持つまでには至っていません。
アメリカの薬剤師に強い権限が生まれるのは、第三者機関による薬剤師の質を保証するシステムがある点も、確実に作用しているでしょう。
専門薬剤師のアメリカでの成功事例
- 虚血性心疾患、糖尿病などの入院患者に対し、薬剤師が薬剤管理指導を実施することによって、総コレステロール値やHbA1c の改善において統計学的に有意であった
- 臨床薬剤師(専門薬剤師が多い)の数を10倍にすることによって病院内死亡が43%低下した
- 専門薬剤師の投入によって経費の削減に成功した上、投与ミスが65%減少した
もちろんこれら海外の成功事例が、そのまま日本に当てはまるものではありません。
法的な背景も違い、国民性や薬剤師に対する環境も異なる日本では、同一のものとして考えることはできないのです。
海外の専門薬剤師は、その質を確保するために第三者機関からの厳しい評価を受けています。
日本の専門薬剤師が劣っているという訳ではありませんが、海外での事例を考える上では、専門薬剤師の質という問題にどうしてもぶつかってしまいます。
逆に言えば、海外のように質を保証するシステムを日本でも構築できれば、これらのような成功事例を生み出すことができるかもしれないということでもあるのです。
内容のない学会が乱立することがないように、また、資格認定ビジネスの温床とならないように、今後の対応が重要となってくるのではないでしょうか。
あや
モンブラン
きよみ
モンブラン
きよみ
目的のない認定資格の取得は時間と労力を無駄にしてしまう
せっかく苦労して認定薬剤師などの資格を取得するのでしたら、しっかりと目的意識を持って資格取得を目指していきましょう。
キャリア設計の面からでも、薬剤師としての自分にはどんな資格が必要なのかを考えることが大切です。
例えば、耳鼻科中心の処方箋がメインの門前薬局なのに、比較的簡単に取得できるからという理由でスポーツファーマシストの認定資格を取得したところで、業務に生かすこともできません。
業務に活かせなければ、メリットは得られないのです。目的のない資格取得は、時間と労力の無駄となってしまうでしょう。
会員を退会すれば取得した認定資格も失効
認定資格の中には、学会に加盟するだけで得られる認定資格も存在します。
資格取得に掛かる労力も少なく簡単に得られるために、とりあえず取得してみようと考える薬剤師もいるでしょうが、その認定資格に意味はあるのでしょうか。
そういった資格は、会員を増やすために用いられた手段である為に質が伴わず、退会すれば失効してしまう資格です。
そういった資格を持っていることで得られるメリットはほぼないと言えるでしょう。
認定資格に関わる職場ではない限り年収アップには繋がらない
認定資格を持っているからと言って、必ず年収アップにつながるというモノではありません。
認定資格を活用できる職場であっても年収にプラス査定される可能性があるだけで、確実ではないものですし、ましてや認定資格との関わりがない職場では、まったく意味がないものです。
自分自身を高めるために学習した結果、付加価値として認定資格を得たというのなら良いでしょうが、年収アップを目指して資格取得をしていくのなら、現在の職場に求められている部分に合わせて計画的に行動していかなければいけません。
まとめ:乱立する認定制度!しっかりと目的意識を持って取得していこう!
薬剤師の認定制度は現在その数をどんどん増やしていますが、その質が確保できているのかといえば、疑問が残ります。
難易度も認定制度によって大きく差が開き、取得方法も異なり、同じような内容で名前だけ多少変えた認定制度が乱立している状況にあります。
すべての認定制度がそうである訳ではありませんが、現状では明らかに不要な認定制度も紛れ込んでいると言わざるを得ません。
内容の伴った認定制度なのかを判断し、自分にとって有益なものをしっかりと選んでいくことが求められるのです。