かかりつけ薬剤師制度がはじまり、かかりつけ薬局として業務を開始している調剤薬局が数多く誕生しました。
ただし、算定要件や指導料の詳細など、細かな規定が多く二の足を踏んでいる薬局も多く存在している状況も存在します。
今回はかかりつけ薬剤師になるための条件や全国のかかりつけ薬局の状況について、わかりやすく解説いたします。
あや
きよみ
あや
モンブラン
2025年までに全ての薬局がかかりつけ薬局へ!
医薬分業が推進され、2018年現在では分業率は7割程度となっています。
そもそも医薬分業が推進された理由は、医療のチェック機能を外部に存在させるためのものとなります。
飲み合わせの確認や適切な治療が実施されているのかを確認するために調剤薬局は生まれましたが、門前薬局ばかりが隆盛な状況では、その目的が完全には果たせていないというジレンマを抱えるに至ったのです。
そこで、その状況を打破するため、2016年4月に実施された診療報酬改定に伴って、かかりつけ薬剤師制度が始まりました。
患者の情報を一元管理することを目的としたかかりつけ薬局では、患者のための薬局として本来の意味を取り戻すことにつながります。
政府の方針では、2025年までに5万7000件全ての薬局がかかりつけ薬局としての機能を持つことを目標としています。
参照:患者のための薬局ビジョン
医療費の財源圧迫と医療現場の人手不足がかかりつけ制度を推進させる背景
適正な医療の実現が表の命題だとすれば、政府の本音である裏の命題が医療費の節約と人手不足の解消です。
かかりつけ薬剤師制度を充実させれば、これらの命題が一挙に解決できるという予測の元、政府主導で推進されています。
2025年は、団塊世代がこぞって後期高齢者の仲間入りをする年です。
当然、必要となる医療費は莫大なものとなり、対応しなければいけない医療者の数も増加します。
これに対応するため、政府は地域包括ケアを推進しており、かかりつけ薬剤師もその一環なのです。
24時間対応、在宅サポート、OTCも含めた医薬品の一元管理などによって地域全体で患者をケアしていく体制を用意し、健康を維持増進して医療費を削減、さらには医療に掛かる手間を減らすことによって、医療従事者の業務を軽減する働きを持っています。
かかりつけ薬剤師になるための5つの条件とは?
薬剤師であれば誰でもかかりつけ薬剤師になれるというわけではありません。
患者に求められ、高いレベルで業務をこなすことができる薬剤師であるという証明が、かかりつけ薬剤師には必要となります。
以下にかかりつけ薬剤師になる為の条件を5つ書き出しましたので、確認してください。
かかりつけ薬剤師になるための5条件
- 薬局勤務経験が3年以上
- 勤務先の薬局に週32時間以上勤務
- 勤務先の薬局に半年以上在籍
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定薬剤師の取得
- 医療に関わる地域活動への参加
※厚生労働省の資料では、3つの条件として掲載されていますがわかりやすいよう当記事では5つに分割しています。
まず必要なことは、薬剤師として働いてきた実績があることです。
一つの薬局である必要はありませんが、調剤薬局での勤務経験が3年以上あることが最低条件となります。
さらに、かかりつけ薬剤師として常に対応できる環境とするため、週32時間以上勤務している必要があり、適切な業務ができるように勤務先には半年以上在籍している必要があります。
薬剤師としての知識をブラッシュアップしている証として認定薬剤師の取得も求められ、地域医療の担い手として存在するため、医療に関係する地域社会活動への参加を定期的にしていることも必要なのです。
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認定薬剤師と専門薬剤師の種類一覧と取得方法とは?34団体53種を紹介
かかりつけ薬局の機能と役割とは?
かかりつけ薬局(かかりつけ薬剤師)は、多くの病院で処方されている患者の服薬状況を一つの薬局で一元管理するために設定されました。
処方箋医薬品の重複投与や残薬調整などを行うほか、OTCやサプリメントなどのセルフメディケーションに関する相談や管理も受け持ち、地域の医療機関との連携を持って包括ケアの一翼を担う役割を持っています。
かかりつけ薬局が持つ機能と役割
- OTC、サプリメント、漢方を含めた医薬品の服薬状況の管理による副作用・多剤・重複投薬の管理
- 休日、夜間も含めて患者の相談に応える24時間対応
- 症状が悪化した際の緊急的な調剤実施
- 医療機関との連携
OTC、サプリメント、漢方を含めた医薬品の服薬状況の管理による副作用・多剤・重複投薬の管理
日本は医療体制が充実しており、誰でも安心して医療を受けられるために、高齢者になるほど多くの病院に受診しています。
処方箋医薬品以外にも、サプリメントや健康食品、OTCなどを自発的に使用していることが多く、その飲み合わせなどに関しては考慮していない場合がほとんどです。
かかりつけ薬局では、処方された医薬品の他、OTC・サプリメントなども含めて一元管理し、相互作用の確認や重複投与のチェックなどを実施することが求められています。
休日、夜間も含めて患者の相談に応える24時間対応
地域包括ケアを担う医療機関の一つとして、開局時間に縛られずに患者対応をすることがかかりつけ薬局には求められています。
24時間対応の実施が要件として掲げられていますが、調剤薬局にはもともと開局時間に縛られず、医薬品や健康・医療に関する質問・相談を受け付けるべきものとされていたため、それが明文化されたという方が正しい解釈だといえるでしょう。
症状が悪化した際の緊急的な調剤実施
夜間や休日など、体調が悪化するタイミングは予測することができません。
24時間対応として患者が体調を崩してしまった時には、緊急で調剤できる体制を維持しておく必要があります。
単独で24時間対応が困難なのであれば、近隣の薬局や医療機関との連携を持って、確実に対応できる地域環境を整備することも求められています。
医療機関との連携
処方箋を通しての関係だけではなく、患者の状態を管理して、必要があれば医療機関へのフィードバックを行うなど、薬局主体での連携も求められます。
これは病院・診療所に限定されているものではなく、訪問ナースステーションなどの介護事業所との関係においても当てはまるものです。
大手薬局は一部店舗以外かかりつけ薬局制度を導入済み
かかりつけ薬局制度を実施しているのは、現在は大手の薬局チェーンが中心となっています。
緊急時における調剤体制の整備や24時間対応、在宅医療への参加など、かかりつけ薬局として機能するには、数々の要件をクリアし、実際に稼働していることが求められます。
小規模薬局ではマンパワーの不足や設備対応・業務対応の問題から、手を出しづらい状況となっているのです。
かかりつけ薬局として対応できない小規模薬局の勝機は皆無
大手チェーン薬局がかかりつけ薬局としての中心にあるなか、届け出を行っていない小規模薬局では、今後の生存競争に打ち勝つことは難しくなるかもしれません。
現在はかかりつけ薬局の数自体が少ないため、それほど大きな問題だとは感じませんが、気づいた時には手遅れとなっている可能性が非常に高いのです。
患者の数は有限であり、すでにかかりつけ薬剤師の登録を済ませている患者を奪い取るのは容易なことではありません。
かかりつけ薬剤師に関わる調剤報酬は優遇され、それ以外の薬局では算定できる調剤報酬が低くなっており、今後ますますその動向は顕著になっていくことが予測されます。
かかりつけ薬局でなければ収益を伸ばすことができなくなり、対応できない小規模薬局は大手薬局チェーンに飲み込まれていく運命にあるのです。
現在も多くなっているM&Aが、より盛んに行われていくのは時代の流れとして当然のことだといえるでしょう。
調剤基本料の50%の額しか算定できない
現在の調剤報酬では、かかりつけ薬剤師指導料などを算定した実績がない薬局では、調剤基本料を50%に引き下げられてしまいます。
過去1年間に該当する加算の算定が10回未満の調剤薬局の場合、2017年4月からこの制度の対象となっているため、かかりつけ薬局との収益の差は大きくなっていくばかりです。
現在は夜間・休日加算や重複投薬・相互作用等防止加算の算定によっても要件を満たしていると判断されるため、調剤基本料を50%算定としている薬局は少ないものですが、次回以降の改定で要件を厳しくされてしまった場合、淘汰される薬局がかなりの数におよぶでしょう。
改定から1年、現場では否定的な意見も
かかりつけ薬剤師制度に対して、現場では否定的な意見も出ています。
通常の調剤薬局では、基本的に24時間患者からの問い合わせに対応できる窓口が設置されており、服薬状況や相互作用のチェックなど、通常の服薬指導管理料で網羅されているものばかりです。
そのうえで、普通よりも高い金額を払ってかかりつけ薬剤師に担当してもらうメリットはあるのでしょうか?
かかりつけ薬剤師という名目ばかりで、内容が伴っていない薬局も中には存在するかもしれません。
患者からの同意を得ると言う行為も、しっかりとインフォームドコンセントが保たれているのかにも疑問が残ります。
そういった否定的な意見を、今後どうやって払拭していくのか、今後の重要なポイントとなっていくでしょう。
健康サポート薬局数は全国で150軒、全体の0.2%程度
健康サポート薬局は、前述したかかりつけ薬剤師・薬局としての基本的機能に加え、下記2つの機能を有している薬局が都道府県知事等に届出を行うことで承認されます。
健康サポート薬局の要件
- 要指導医薬品等の供給機能や助言体制
- 健康相談受付、受診勧奨・関係機関紹介
その目的は、国民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能を備えた薬局として運営されることです。
健康サポート薬局となった薬局は、地域包括ケアの促進と医療費の節約、双方に優れた効果を発揮する薬局となることでしょう。
通常の薬局と健康サポート薬局との機能の違い
健康サポート薬局は調剤報酬のメリットが一切ない
健康サポート薬局になることで責任が重くなって業務が増える一方、調剤報酬によるメリットが一切なく、それ故に健康サポート薬局としての届け出を行っている薬局は全国でも少数です。
2016年10月から開始されてもうすぐ1年が経ちますが、薬局の体制整備が必要となる部分が多く、提出書類も多く煩雑なため、未だに全国で150軒程度の導入数となっています。
小規模薬局ではかかかりつけ薬局としての機能を持てたとしても、健康サポート薬局まで対応することは現実的に不可能なのが現状です。
モンブラン
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きよみ
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まとめ:かかりつけ薬剤師の算定が薬局運営のカギとなる!
かかりつけ薬剤師制度には否定的な意見もあり、現実的に人員不足などで対応できていない薬局が多い中、大手調剤薬局では進んで届け出がされています。
調剤報酬でもかかりつけ薬剤師や地域包括ケアに算入している薬局を優遇するようになっており、今後はその傾向がより強くなっていくことが予想されます。
時代の流れに乗れない会社は栄えることもなく、いずれは淘汰されていくことになってしまうでしょう。
大手企業に吸収されてしまう前に、今一度かかりつけ薬剤師制度について考えてみてはいかがでしょうか。
転職するならかかりつけ薬剤師のマニュアルが整った企業へ
かかりつけ薬剤師になることに対して、否定的な意見を持つ方はまだまだ多いと思います。
ただ、医療費が国家予算を圧迫する日本では、医療費削減に関わるかかりつけ薬剤師制度をもう止めることはできません。
業務の負担が増えることになりますが、柔軟に対応していくしかないのです。
そこで、これから長期的に働く上で調剤薬局を選ぶポイントは、かかりつけ薬剤師のマニュアルが整備されているか否かです。
かかりつけ薬剤師の導入したはいいもののマニュアルが整備されていないため、調剤過誤を引き起こしたり、24時間対応と言いつつも患者が急変した際に対応できなかったりしては、大きなクレームになってしまうことでしょう。
その企業で働く薬剤師にとってもかなりのストレスになります。
しかし、マニュアルが整備されている企業の見極めはどのようにしたらよいのでしょうか?
答えは、転職サイトのコンサルタントに内部情報を事細かく確認してもらうことが必要です。実は、大手調剤薬局でもマニュアルが整備されていない企業は多くあるんです。
下記に、転職サイトのランキングを紹介していますので、今の職場の対応や環境に不満のある方は、一度コンサルタントに相談することをおすすめします。