病院薬剤師として経験を積んだ後、調剤薬局への転職を選択肢に考える薬剤師は意外と多いものです。
とはいえ同じ薬剤師だとしても、病院と調剤薬局では求められる知識や技能に違いがあり、職場の選択に戸惑ってしまうこともあることでしょう。
そこで今回は、病院から調剤薬局へ転職を検討している薬剤師の方に、失敗しない薬局の選び方と好印象を与える志望動機例文についてご紹介します。
あや
きよみ
モンブラン
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病院から調剤薬局へ転職する薬剤師の6つの理由とは?
病院で働いている薬剤師が、調剤薬局への転職を考える理由は、大きく分けて6つに分類されます。
将来を見据えた理由もあれば、現状の不満を解消するためという理由もあります。それぞれについて見ていきましょう。
1、年収・給料が安い
同年代と調剤薬局勤務の友人と比べると給料が50万円低いみたいでした。やりがいはあるけどこのまま働き続けるのはちょっと難しいなと思ってます。(20代女性)
これから子供が生まれるので給料アップのために転職を考えています。病院勤務は忙しいのに給料が割に合わないと思います。(30代男性)
病院薬剤師の最大の弱点として、収入が低いことが挙げられます。
勤務している病院によって生涯年収は大きく異なる為に一概には言えませんが、一般的に年収では100万円以上の差をつけられていることが大半です。
また、病院薬剤師の平均退職金額(20年勤務)は、728万円。
これは調剤薬局、ドラッグストアの退職金と比べておおよそ倍の金額ですが、年間100万円の差をつけられているとすれば、生涯年収では大きく見劣りしてしまうでしょう。
15年、20年と継続して働き続け、ある程度の地位とならない限り、生涯賃金では調剤薬局より低くなってしまうのです。
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2、キャリアの幅が限定的
40代になっても調剤業務はやりたくないです。運営や経営に関わるようなキャリアにつきたいので病院勤務だと実現できなそうです。(30代男性)
将来はバイヤーや商品開発に携わりたい思っています。このまま病院勤めでは目標に近づくことができないので、大手への転職を考えています。(20代女性性)
病院薬剤師のキャリアは、その病院内での出世の道しかありません。
薬剤部長の椅子は一つだけである為、周囲の同世代の薬剤師は皆ライバルとなってしまい、そのすべてに打ち勝たなければキャリアも途絶えてしまうのです。
その点、大手の調剤薬局やドラッグストアでは、現場の薬剤師としての働き方だけではなく、新規店舗の開拓やバイヤーとしての道、また、本部運営や新人教育など、さまざまなキャリアプランが用意されています。
薬剤師としてのキャリアを新たに考え、病院からの転職を決める薬剤師も多くいるのです。
3、子育て支援制度が調剤薬局ほど充実していない
病院薬剤師は人数が少ないので急な休みの対応とかができないから、子育てを考えるとヘルプ要員もいる大手調剤薬局の方がいいのかなって思っています。(20代女性)
病院の場合、子育て支援制度が充実していないことが多くあります。
一部の病院では病院内保育所なども用意されていますが、それも医師限定のものであったり、コメディカルは先着順であったり、薬剤師に優遇されていないことがほとんどです。
それに対して、調剤薬局の子育て支援制度は、長期間の育休制度や復帰後の時短勤務など、子育てと仕事の両立ができるように配慮されています。
ワークライフバランスを考えれば、病院よりも調剤薬局を選択することになるのでしょう。
4、当直・夜勤で体調が崩れやすい
働き始めは問題なかったのですが、30代になると当直はかなりきついです。調剤薬局でもかかりつけ制度で24時間対応しなければならないかもしれませんが、毎月数回の夜勤は限界です。(30代女性)
人間は太陽の活動に即して生きていく生物です。
朝の光で体内時計をリセットし、覚醒するためのホルモンを分泌するようにプログラムされています。
当直や夜勤となれば、このプログラムにズレが生じてしまい、その頻度が多ければ多いほど、体調に何らかの不具合が生じてしまうものです。
病院での勤務では、どうしても夜勤・当直から逃れることはできません。職場を変えてしまうことが、もっとも速やかな解決方法となるでしょう。
5、休日数が少ない、有給が取得しづらい
調剤薬局なら年間休日が120日以上だし、薬剤師数が多いから有給も指定日に取れるみたいだから羨ましいです。アイン薬局なら年1回9連休が取れるので、旅行にもいけるし転職を本気で考えています。(30代女性)
病院で働く薬剤師は、休日が少なく有給の取得も難しいと言われています。
これは病院で勤務している薬剤師の人数が少ないことに起因します。
とはいえ、大学病院などの大規模病院の薬剤部などでも、調剤薬局と比べれば人員が少ないことは言うまでもありません。
人員がある程度確保できている調剤薬局では、完全週休2日+祝日に加えて有給取得も容易にでき、ライフワークバランスに優れた働き方ができるでしょう。
6、人間関係が悪くても異動できない
薬局長と言い合いになってしまってすでに数ヶ月間険悪なムードです。毎日顔を合わせなきゃいけないのはストレスです。(30代男性)
病院薬剤師の場合、異動できるような別施設もなく、別の部署もありません。
人間関係に問題があっても、耐えて働き続けるしか選択肢はないのです。
その点、調剤薬局なら特定の人と人間関係がうまくいかないのなら、他店へ異動することができます。
不要なストレスに悩まされることはなく、業務に集中できるのは調剤薬局のメリットだと言えるでしょう。
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病院と調剤薬局の業務上の違いとは?
同じ薬剤師ではあるものの、病院と調剤薬局では業務上の違いが存在します。
それぞれの違いを把握し、現在の職場でしか経験できないことをしっかりと学び、また、転職後のギャップに苦しむことがないように対策をしておきましょう。
- 病棟業務
- TDM
- 注射剤の調剤
- 抗がん剤等注射剤のミキシング
- チーム医療への参加
- 治験業務
病院で薬剤師が行う業務は、調剤薬局に比べてより専門性の高いもの揃っています。
調剤業務・製剤業務に関しては調剤薬局でもほぼ同様の業務を行いますが、一般的な調剤薬局では抗がん剤のミキシングや注射剤調剤は行われません。
病院で取り扱う業務は、治験やTDMなど、より学術的な側面を持つ業務も多く担うのを特徴とします。
調剤薬局でしか経験できない業務は、それほど多くはありません。
調剤薬局の収入源である調剤報酬の計算や、それに伴ってかかりつけ薬剤師としての業務や在宅業務が調剤薬局ならではの業務となります。
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調剤薬局6つのタイプとは?
一口に調剤薬局といっても、実は大きく6つのタイプに分けることができます。
行う業務に大きな違いはありませんが、働き方の違いが生まれる部分であるため、それぞれを確認した上で、自分が考える理想に最も近いタイプを狙って転職活動を行っていきましょう。
1、総合病院門前薬局
総合病院門前薬局では、午前中に患者が集中して来局する傾向にあります。
受診時間が重なっているため、その時間帯は外来業務が煩雑になってしまいます。
処方箋は門前病院の診療科に準ずるため、幅広い処方箋を扱うことができます。
また、処方内容は調剤薬局の中でも最新医療にもっとも近いものとなっています。
2、マンツーマン薬局
マンツーマン薬局は、診療所・クリニックなどの小規模医療機関の門前薬局となります。
診療科は基本的に単一のもので、処方内容は処方医の意向で決定するため、偏りが生まれやすい特徴があります。
午前・午後ともに患者は訪れますが、忙しさは対応している病院の患者数に寄る為、その店舗によって異なるでしょう。
3、面分業型薬局
面分業型薬局では、特定の門前医療機関を持たないため、幅広い処方箋に対応できる可能性があります。
一人一人の患者に対して深く関わりを持つことができ、本来の意味のかかりつけ薬剤師として勤務できます。
ただし、外来の処方箋はそこまで多くはなく、在宅医療や介護施設処方箋の対応なども業務として担うことになります。
4、医療ビル・モール型薬局
医療ビル・モール型薬局では、複数の小規模医療機関を一つの薬局で対応することになります。
医療機関によって診療時間が異なる為、常に患者は訪れて忙しく働くことになるでしょう。
複数の診療科の処方箋に触れることができるため見識は広がりますが、処方医の意向に即した処方箋が多くなってしまいます。
5、在宅・施設調剤型薬局
在宅・施設調剤型薬局は、主に在宅医療や介護施設に対する調剤を受け持つ薬局です。
外来の対応をすることは稀で、基本的には予定された活動をこなしていく業務となります。
在宅医療への参加をするため、地域医療への参加が必須となりなります。
6、調剤併設型ドラッグストア
調剤併設型ドラッグストアといっても、門前医療機関を持っている場合と面分業している場合では、大きく異なります。
通常業務は処方箋の対応とOTC医薬品の対応となりますが、門前医療機関を持っている場合には処方箋の枚数が多く、非常に忙しく働くことになります。
面分業している場合では処方箋の枚数が少ないため、一人当たりの患者に掛けられる時間を多く持つことができますが、調剤業務以外の業務を多く任せられることもあります。
大手調剤薬局か?それとも中小調剤薬局に転職するか?
調剤薬局のなかでも、大手に就職するか中小に就職するかで、待遇が大きく異なります。
どちらが優れているというものではありませんが、自分が考える調剤薬局の姿に近いものを選択していきましょう。
まず、大手調剤薬局の場合、店舗数が多いために転勤が発生することがあります。
しかし、人間関係に問題が発生した場合には、別な店舗へと異動することも容易です。
また、会社の規模が大きいためにキャリアプランが多彩に用意されており、薬剤師ではない働き方を目指すこともできるでしょう。
薬剤師数が多いため、休暇の申請は許可されやすく、有給も取得しやすい環境となっています。
ただし、基本的に給料が低く、病院からの転職だとしても大きく収入を増やすことにはならない点はデメリットとなります。
中小調剤薬局の場合、店舗数は多くはありませんが、地域内に複数の店舗を展開していることがほとんどです。
長距離の転勤はありませんが、社内の距離が近いため、人間関係に問題が発生しても完全に遮断することは困難です。
キャリアプランは限定されていることが多く、薬剤師としてキャリアップしていくだけとなります。
薬剤師数が不足している店舗もあり、休暇は取れても有給は調整が必要になるでしょう。
しかしながら、大手調剤薬局に比べても収入を大きく伸ばすことができる点は大きなメリットです。
以下の記事では、大手から中小まで厳選した調剤薬局を紹介していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
薬剤師人生は職場次第!大手から中規模調剤薬局の評判や給料を紹介
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病院から調剤薬局への転職で失敗しないための志望動機例文
ここで、調剤薬局に転職する上で必須となる志望動機についてチェックしていきましょう。
人気の調剤薬局に転職するには、ライバルよりもより人事担当者の心に刺さる志望動機を考える必要があります。
現状の調剤薬局では、かかりつけ薬剤師制度が始まったことで、長期的に働ける薬剤師を求める傾向にあります。
その点を踏まえつつ、より好印象となる志望動機を考えておきましょう。
以下に例文を用意しておきますので、これを参考に自分なりにブラッシュアップしてください。
例文1:病院勤務で培った能力をアピール
私は病院において薬剤師として経験を積み、知識を蓄えてきました。この経験と知識を用いて業務に貢献したいと考えています。
たとえば、かかりつけ薬剤師をするにあたって、検査値に対する知識は非常に重要です。
その知識があることによって患者の訴えを的確に把握し、薬剤師として正確な判断を下すことができます。
また、病院でのみ使用される医薬品に対する深い造詣を持っていることで、相互作用の確認や副作用の把握をスムーズに行うことができます。
薬剤師として知識と経験を活かして業務に参加して、御社のかかりつけ薬剤師の活動をさらに発展させていきたいと考えております。
よろしくお願い致します。
自分の能力をただアピールして押し付けるだけではなく、自分の能力を用いて会社に対してどんな貢献ができるのかをアピールしていきます。
かかりつけ薬剤師の業務に対する熱意を伝えることで、企業側が求めている人材像に合致した人物であると言う印象を与えるようにしています。
例文2:地域医療への意欲をアピール
政府の方針では患者を地域で支える地域医療は重要視され、調剤薬局もその一翼として大きな期待を受けています。
医療機関や介護施設との連携を持つことは簡単なことではありませんが、調剤薬局の可能性を広げるチャンスでもあると考えています。
御社では在宅医療を実施する際、医師や看護師との同行も行っていると伺いました。
地域医療では他職種との連携が非常に重要なウエイトを占めていますが、御社ほど他職種連携を実現している企業はありません。
是非とも御社の活動に参加し、地域医療を支える薬剤師として働きたいと考えています。
数ある調剤薬局の中でも、その企業でなければいけない理由を伝えます。この文章では、在宅医療における医師同行を実施している点を挙げ、自分がなぜこの会社に転職したいのかを会社の特徴に即して伝えています。
転職を希望する会社がどんな事業に注力しているのかを把握している点も併せてアピールすることで、転職に対する熱意も伝えることができます。
例文3:専門薬剤師資格の知識をアピール
私が勤務していた病院はがん専門薬剤師の研修施設として認可されており、私もがん専門薬剤師の資格を持っています。
現代の医療ではがんになってからも通院治療を継続することが多く、がん発症後の余命も長くなっています。
それに伴って、調剤薬局において抗がん剤を調剤する機会は多くなっていますが、薬局薬剤師として学べるがん治療には限界があります。
がん専門薬剤師としての知識を活用すれば適切な患者対応ができるのはもちろん、職員間での情報伝達によって会社全体のがん患者への対応水準をより高めることもできると考えています。
是非とも御社でがん専門薬剤師としての経験と知識を発揮し、業務に貢献したいと思います。
よろしくお願い致します。
調剤薬局では取得することが難しい資格を持っていることをアピールし、その知識と経験で会社に対してどんな貢献ができるかを伝えていきます。
自分が持っている資格が必要になる場面を想定することで、相手にも具体的に有用な資格であると想像できるように話しています。
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薬剤師の履歴書「志望動機」採用担当者に熱意を伝える!書き方と例文
まとめ:個性豊かな調剤薬局、しっかり選んで希望通りの転職を!
病院から調剤薬局へ転職を考える薬剤師はたくさんいます。
しかしながら、そのすべてが転職に成功しているとは言い難いのが実情です。
調剤薬局にはそれぞれ特徴があり、その特徴を理解しないままに転職活動をしてしまえば、希望にそぐわない転職となってしまうのです。
今回の記事を参考に、自分が考える理想の調剤薬局はどんなタイプであるのかをしっかりと把握し、失敗しない転職を実現させてください。