薬剤師として働いていくのであれば、もっともわかりやすいキャリアアップとして身近な目標の一つなのが管理薬剤師や薬局長となることです。
しかし、実際に管理薬剤師や薬局長とは、どんなお仕事をしているんでしょうか?
その待遇に、一般の薬剤師と比べてなにか違いがあるのでしょうか?
今回は身近だけれども意外と知らない管理薬剤師・薬局長になるために必要なスキルや年収などについてお話していきます。
あや
きよみ
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管理薬剤師・薬局長の違いとは?
小さな会社では管理薬剤師も薬局長も同じ意味として用いられている場合がありますが、正確には違うものなのです。
管理薬剤師とは、法律で規定された調剤薬局を管理する薬剤師のこと。
薬局長とは、法律に関係なくその薬局において権限をもった薬剤師のことです。
薬機法に定められている管理薬剤師の要件と制限
管理薬剤師の要件と制限
- 薬局や製造業など医薬品を扱う職場では最低1人管理薬剤師を配置しなければならない
- 店舗間の兼任は不可
- 週に40時間以上勤務(つまり正社員かフルタイムのパート)
管理薬剤師となるための制限を記載しましたが、見ていただければわかるように、正社員の薬剤師であれば無条件で管理薬剤師を務めることができます。
唯一注意しなければいけないことは週に40時間以上の勤務実態があることですが、常勤・フルタイムであれば問題なくクリアすることができます。
要するに、管理薬剤師を務めるためには、ただ会社から任命されればよいというわけです。
大手チェーン薬局では管理薬剤師とは別に、薬局長という役職を設けていることもありますが、薬局長というポジションに法的な規制は全くなく、設置する義務もないため、管理薬剤師が薬局長を兼任している場合も多くあります。
明確に管理薬剤師と薬局長の仕事が区別されているというわけではないため、その業務は会社によって異なります。
おおまかに区別すれば、管理薬剤師は法律を準拠した薬局を作る仕事を、薬局長は人員管理などのマネジメントを含めた店舗管理を担っている場合が多いようです。
管理薬剤師の具体的な仕事内容
管理薬剤師が普段どんな仕事をしているか知っていますか?身近にいる存在ですが、よくよく意識しないとどんな業務を行なっているかわからないものです。
管理薬剤師といえども、務める企業によって行う業務は異なります。調剤薬局か医薬品卸企業で行う仕事内容は違うため、その違いについて確認しておきましょう。
調剤薬局で働く管理薬剤師の仕事内容
調剤薬局の場合
- 医薬品の在庫管理
- 店舗のマネジメント
- 医療機関・卸業者との渉外
- 店舗の法的管理
調剤薬局の管理薬剤師が行う業務は多岐にわたります。
店舗の医薬品管理、薬局内掲示物などの法的な規制の準拠を行い、業務が円滑に行われるように努めなければいけません。
卸業者との価格交渉を管理薬剤師が行っている場合がありますし、病院などの医療機関との情報の共有や業務の提携など、外部との交渉を担う役割も持っています。
薬局長が別に任命されている場合には、その業務を在庫管理や法律準拠などの業務に特化させているということもありますので、企業によって管理薬剤師がどこまで関わっていくのかは全く異なると言えます。
医薬品卸業で働く管理薬剤師の仕事内容
医薬品卸業の場合
- DI業務
- 医薬品の安全管理・法律管理
- MS・職員への医薬品指導
- 店舗の法的管理
医薬品卸業だとしても調剤薬局と同様、その営業所に一人の管理薬剤師を設置しなければ営業することはできません。
医薬品卸業での管理薬剤師は、店舗における医薬品の管理は当然のこととして、医薬品の専門家ではない一般職員への教育を行うことも求められます。
さらに、病院や薬局からの医薬品に関する問い合わせを受けるDI窓口としての役割も持つため、現場で働く以上の医薬品知識が必要になります。
管理薬剤師・薬局長になるための必須スキルとは?
管理薬剤師・薬局長になるためには、医薬品に関する知識以外にもたくさんのスキルが必要になります。
施設で取り扱う医薬品を全て把握していることは大前提として、医薬品の調剤に関わる法的な規制を把握しながら正しく管理する知識や、一般の薬剤師への教育・指導を行うためのマネジメントスキル、患者のクレーム対応などのコミュニケーションスキルも必須となります。
たとえば、店舗に掲示してある書類も、すべて法律的な根拠に基づいて掲示されています。
それらが間違っていた場合には行政指導の可能性もあるため、しっかりとした事務処理能力は必須の項目となるでしょう。
店舗内の人間関係を円滑に維持するためには、マネジメントスキルはもちろん、コミュニケーションスキルが重要になります。
これは社外とのかかわりや患者対応・クレーム処理でも生かされるスキルですが、一般の薬剤師ではそのスキルが低く、管理薬剤師としてもっとも重要なスキルと言えるのです。
さらには売り上げなど数字に対しての責任も発生するため、その業務は非常に多忙なものとなります。
ジェネリック比率や物販の収益率、繁忙期の管理など、ただ医薬品知識を披露していればよかった一般薬剤師とは、見ている次元を別にしなければいけません。
あや
きよみ
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モンブラン
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管理薬剤師・薬局長の年収相場は600万円~700万円
管理薬剤師・薬局長は、役職として任命され、経験を十分に積んだ薬剤師が務めているため、勤務年数に応じて年収が大幅にアップする傾向にあります。
ただし、すべての職場で役職としての手当が貰えるというわけではなく、通常の年収アップに多少色を付けた程度で済ませている職場も存在しています。
年収相場
- 年収:600万円~700万円
- 手当相場:月1〜3万円
基本給ももちろんですが、管理薬剤師手当などによっても収入が確保できるため、年収では約50〜100万円ほど高くなると考えることができます。
薬剤師が稼げる上限の年収700万に届くためには、管理薬剤師になることが必須になります。
詳しくは、「薬剤師の年齢・職種別の平均年収とは?給料を上げる4つの方法も解説」で紹介しています。
職場別、管理薬剤師の年収相場
管理薬剤師の年収といっても、どんな職場に勤めているかによってある程度の違いが生じてしまいます。
ここで大まかな職場による年収相場の違いを確認してください。
大手調剤薬局で働く管理薬剤師の年収相場
年収相場:500万円~600万円
大手調剤薬局では、一つの店舗の管理薬剤師となっても、ある程度の年収しか得られません。
エリアマネージャーなどの広域の管理者となったり、全国対応社員となったりすることによって年収を上げていく必要があるため、管理薬剤師というだけではあまり期待できないでしょう。
小中規模調剤薬局で働く管理薬剤師の年収相場
年収相場:600万円~700万円
小中規模調剤薬局では、管理薬剤師は店舗の管理者であるとともに、 薬局長も兼務している例がほとんどであり、業務が多忙である代わりに年収への返報も大きくなります。
ドラッグストアで働く管理薬剤師の年収相場
年収相場:500万円~600万円
ドラッグストアでの管理薬剤師では、それほど年収への恩恵はなく、一般の職員に手当として1万円付与される程度です。
ドラッグストアの管理者はその店舗の店長であり、管理薬剤師ではないことが原因となります。店長になることができれば、年収は大きく上がるでしょう。
病院で働く管理薬剤師の年収相場
年収相場:450万円~800万円
ひとくくりに病院と言っても、民間病院であるのか公営病院であるのか、慢性期であるのか急性期であるのかによって年収は大きく異なります。
民間病院・急性期病院の場合には、薬局長となってもそれほど高い年収は期待できません。
逆に慢性期病院の場合にはあまり人気がないこともあって、高い年収となる傾向にありますし、公営病院では役職手当も充実しており、他の職種よりも高くなる傾向にあります。
製薬会社で働く管理薬剤師の年収相場
年収相場:350万円~800万円
会社の規模によって大きく左右されるのが、製薬会社の管理薬剤師です。
大きな企業の管理薬剤師となれば、かなりの年収を得られる代わりに業務も非常に多忙になります。
逆に小規模の会社であれば、ただ在籍している必要があるために入社してもらうだけで、業務内容はは穏やかになりますがその分年収は低くなります。
物流センターで働く管理薬剤師の年収相場
年収相場:400万円~600万円
定時退社が普通で、外部とのかかわりも少なく、決算時期以外は落ち着いている職場ですので、年収も通常よりも低めの企業が多い傾向にあります。
ただし、大手企業の物流センターなどの場合ですと、きちんとした給与システムがあるため、比較的年収は高くなることが予想されます。
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管理薬剤師になるための近道は昇進か?転職か?
管理薬剤師になるには、大まかに2つのルートが存在します。
現在勤めている職場で認められて管理薬剤師になる方法と、管理薬剤師を募集している職場に応募して管理薬剤師になる方法です。
目標としていつか管理薬剤師になってみたいというのであれば、どちらのルートを使ったとしてもいずれは管理薬剤師になることはできるでしょう。
ですが、すぐにでも管理薬剤師になって仕事がしてみたいというのなら、会社内での昇進を待っていては遅すぎます。
会社に直談判して管理薬剤師に昇進させてもらいますか?あまり現実的とは言えませんよね。
であれば、 管理薬剤師になれる人材を求めている求人に応募する方が確実に近道です。
転職理由としても、管理薬剤師をやりたいというのは、自分のキャリアアップのためというポジティブな理由となりますので、採用する側にとっても好感を持てる理由となるでしょう。
ただし、転職で管理薬剤師になるには、相応の経験が必要になります。
なにも知らない若手薬剤師に任せられるというのは、逆に人材不足が深刻な企業であると打ち明けているようなものです。
良い企業の良い求人に出会うためにも、管理薬剤師として転職したいのであれば転職サイトを活用することをお勧めします。
管理薬剤師の転職体験談
管理薬剤師へキャリアアップ(一般薬剤師→管理薬剤師)
薬剤師としてキャリアを重ね、管理薬剤師ではないものの職場の先輩管理薬剤師のサポートとして仕事を任さていました。しかし、私自身が管理薬剤師になりマネジメントや店舗管理をしたい気持ちが強くなり転職を決意。
今いる職場ではすでに先輩が管理薬剤師としての業務を行なっていたため昇進は現実的ではないなと思ったんです。
自宅から近いエリアに他企業の新店舗ができる情報をタイミングよく転職サイトのコンサルタントから聞くことができ、管理薬剤師としての就業経験はありませんでしたが熱意を評価して頂き転職に成功しました。
業務内容は増え仕事自体は忙しいのですが、やりがいとそれに見合った評価(給料)をしてもらっているので転職してよかったと心から思います。
正当な評価を得るために転職 (管理薬剤師→管理薬剤師)
管理薬剤師として若手薬剤師の教育とマネジメント役を担ってきました。
しかし、当時の職場では自分の仕事に対する評価が正当ではなかったため転職を考え始めました。
転職で重視した点は「やりがい」と「報酬などの評価制度」があることでした。結果的に複数の企業から内定をもらうことができました。
働き初めは、良い意味で企業によって給料や評価制度がここまで違うのかと驚きました。もっと早く転職をしておけばよかったなと…。
管理薬剤師になるには現在勤めている職場で昇進するという方法もありますが、管理薬剤師を求めている求人に転職するという選択でも可能になります。
現在の職場でも管理薬剤師は当然存在していますので、いわゆる年功序列としていつまでも我慢しなければいけない状況も考えられます。
昇進を待って管理薬剤師になる方法では、いつまで待っても実現しない可能性もあるため、本当に経験したいのであれば転職するというのが確実な方法でしょう。
ただし、注意したいのは管理薬剤師として業務に従事している場合、店舗の管理者という立場となり、自分を評価してもらうというよりも、他の職員を評価する立場になってしまうため、自分自身が正当な評価を受けるというのは難しくなる傾向にあります。
管理薬剤師の仕事には重い責任と成果が求められますが、それに見合った収入を得られなければ、満足して勤務を続けられません。
確かに給与などの待遇は、どこの企業でも一般の薬剤師よりも優遇されることが多いですが、長期間の休暇を我慢しなければいけないなど、自分本位の考えを捨てなければいけない場面も出てきます。
正当な評価を受けているという実感がなければ、精神的にも体力的にも働いていくのが難しくなってしまうでしょう。
まとめ:管理薬剤師は様々なスキルを求められるやりがいのある仕事
管理薬剤師になることで年収はアップしますが、それに合わせて責任も重くなります。
店舗を適切に管理する法的な知識、周囲をマネジメントする能力、事務処理能力など、数え上げればきりがないほどのスキルが求められます。
重い責任を負いますが、それは自分の責任で店舗を良い展開にも悪い展開にもすることができるというものです。
一般の薬剤師でいる時とは、比べ物にならないほどの経験・学びを得ることができます。
管理薬剤師となることで、間違いなく人間的にも成長できますので、チャンスがあれば是非とも目指してみてください。
管理薬剤師になるための求人を多く扱っている転職サイトとは?
有名どころの転職サイトですと、マイナビ薬剤師・薬キャリエージェント・リクナビ薬剤師がありますが、特にマイナビ薬剤師は、保有する非公開求人の数が多いので、希少な管理薬剤師の求人も他サイトと比べて多く扱っています。
また、職場の雰囲気や処方せん枚数、評判などの内部情報も情報共有してくれるため、失敗のない転職をすることができます。
ただし、管理薬剤師の求人は求人数が少ないにもかかわらず、応募者が殺到するため、募集してから数日以内に締切してしまうケースも少なくありません。
たとえ今すぐに転職するつもりがなくても、普段から転職サイトはマメにチェックし、条件の良い求人が出たらすぐに対応できるようにしておく事が転職を成功させるコツです。
名前や連絡先などの必要事項を記入したら登録完了です。登録後は、担当コンサルタントから電話で連絡がきますのでご自身の希望条件や情報収集したい事を伝えてみましょう。心強いサポートをしてくれますよ。