開発業務受託機関(CRO)で臨床開発モニター(CRA)として働く就業者数は、日本全体でも9000人程度しかいません。
そのため、CRAとして3年以上の経験者ともなると、かなりの売り手市場になります。
忙しい業務ですが入職後の年収の伸び幅も大きく、やりがいを持ってできる仕事なのです。
CRAとして働いている人は、何らかの医療資格を持っていることがほとんどですが、看護師や臨床工学技士などあらゆる医療スタッフの中でも薬剤師からの転職が最も多いのも特徴のひとつ。
この記事では、薬剤師がCRCへと転職するためのポイントをお伝えします。仕事内容や年収などの待遇も合わせて解説していますので、参考にしてみてください。
きよみ
あや
モンブラン
きよみ
モンブラン
仕事内容を混同しやすい治験コーディネーター(CRC)と臨床開発モニター(CRA)の違いに関しては、下記記事で詳しく紹介していますので、合わせて読んでおくとより理解が深まりますよ。
薬剤師から治験コーディネーターCRCへ転職するには?仕事や年収も合わせて解説
年収を下げないCRA求人なら!転職サイトランキング | ||
---|---|---|
マイナビ薬剤師 |
じっくり重視 サポートが充実 ミスマッチが少ない |
|
薬キャリエージェント |
スピード重視 優良な病院求人 細かなニーズにも対応 |
|
ファルマスタッフ |
派遣重視 研修制度が充実 社会保証完備 |
臨床開発モニター(CRA)の主な仕事内容と流れ
CRAの業務は、製薬会社が行う治験に関わる業務をサポートすることです。
治験に実施するために必要な書類の用意や、治験実施中に作成された資料のチェックなど、治験全体を通して問題なく進行してもらうための業務を行っています。
CRA業務の全体的な流れ
- 治験実施計画書の作成
- 医療機関、治験責任医師、治験審査委員会の調査
- 契約書の準備
- 治験審査委員会の開催
- 治験薬の交付
- 治験薬や治験実施計画書の説明
- 同意説明文書の作成サポート
- 被験者の登録促進
- 治験実地契約書に従ったモニタリング
- 治験の終了
治験業務前の事前準備
CRAは製薬会社の依頼によって、治験の事前準備を行います。
治験を実施するためには、法律に準拠して、治験実施に関する規約の作成や様々な契約書の用意が必要となります。
治験を実施してもらう医療機関や医師の選定など、事前準備は治験の成功を左右する重要なポイントなのです。
治験実施計画書
治験実施計画書(プロトコル)の作成自体はCRAが行うわけではありません。
法改正によって治験実施のためのルールが厳密に定められ、それに準拠したプロトコルも必須のものとなりました。
そのため、法律を深く理解した専門家や、医療に関わる契約書を専門に作成するメディカルライターなどがプロトコルの原案を作成し、それをもとにプロトコルの本案を作成します。
医療機関、治験責任医師、治験審査委員会の調査
治験を行うにあたって、医療機関や治験責任医師、治験審査委員会の調査を行います。
対象となる患者をどの程度見込めるのか、治験に関する知識や理解はどうか、治験審査委員会の運営はどのような体制になっているか、今までに治験をどの程度経験しているかなど、様々な観点から調査を進め、よりスムーズに治験を実施できる施設を選定していきます。
治験契約の締結
治験を実施していただく医療機関が決定したら、次は治験契約を締結しなければいけません。
遵守していただくGCP(治験実施の際に遵守する基準)などに関して、理解・同意を得た上で治験を実施することが大切なポイントです。
契約書の準備
治験契約書の作成はCRAが行う業務になります。
その契約書の内容には、GCPの遵守や治験の進め方などの他、費用や賠償金などの項目も設けられています。
製薬会社と病院が、双方に合意を得たという証明となるものであるため、どちらかに有利に偏った内容とならないように厳重に作成していく必要があります。
ここでは、製薬会社の代理人として働くCRAが病院側との交渉をする場面も存在するのです。
治験審査委員会の開催
治験を実施するためには、治験審査委員会(IRB)によってプロトコルやGCPが適正なものであると承認を受けなければいけません。
CRAは治験実施に伴って、IRBがGCPを準拠した構成になっていることを確認したのち、プロトコルの承認申請を行います。
IRBによって、どちらかに不正な利益や不正な挙動はないか、被験者に不利益がないかなど、厳正な審査ののち承認され、治験は実施されます。
治験開始
治験を開始するにあたり、治験薬の配布や治験実施に伴う医療スタッフへの説明会の開催などがCRAの業務として発生します。
プロトコルに準拠した治験でなければ、症例報告書はすべて使用できないものとなってしまうため、治験実施をする医療機関全体で理解してもらうことが求められます。
治験薬の交付
治験で使用する治験薬を交付します。
対照薬なども含めれば、治験を実施するために用いられる医薬品は複数に渡る場合もあるため、取り違えなどのミスが発生しないように配慮する必要があります。
治験薬や治験実施計画書の説明
治験期間中に使用する治験薬を交付するにあたって、投与スケジュールや併用禁止薬などの説明を行います。
これは医師やCRCに対してだけではなく、実際に取り扱いをすることになるであろう薬剤師や看護師も含めて、医療スタッフ全体での統一見解を得るように努めなければいけません。
服薬条件が整っていなければ、症例報告書として採用できなくなってしまうため、特に注意を払うべき部分なのです。
同意説明文書の作成サポート
治験を行うためには、被験者となる患者に治験に関する説明を行い、同意を得ることが必要になります。
それに伴って、治験責任医師に同意説明文書の作成を依頼することになりますが、その作成のために必要となる資料の提供などといったサポートもCRAが行います。
被験者の登録促進
いかに素晴らしい新薬だとしても、治験が実施されて認可を受けなければ世に出ることはありません。
より早く治験を終了させるためにも、被験者を集めることはとても重要な業務なのです。
対象となる患者をどうやって集め、いかに同意を得ていくかで、CRAの能力が決まるとすら考えられています。
治験実地契約書に従ったモニタリング
症例報告書が不採用とならないためにも、モニタリング業務はCRAにとって基本かつ最重要の仕事です。
GCPに照らし合わせて、患者の利益は守られているか、得られているデータは適正なものであるのか、治験の実施がプロトコルを遵守できているのか、常に目を光らせていかなければいけません。
プロトコルから逸脱している場面があれば、それに関するコメントの記載が適切に行われているかも重要なチェック項目です。
症例報告書が完成した後には、それと原資料との間に相違はないか、記載事項に漏れやミスはないかのチェックを行い、モニタリングの結果を記載したモニタリング報告書を作成することで、この業務は一端の終了とできます。
治験の終了
治験がすべて終了した時点で、プロトコルやGDP、院内の業務手順書に従って終了処理を行っていきます。
最終的な症例報告書のチェックを行い、未解決となっている部分はないか確認していきます。
もし未解決部分があった場合には、今後どのような計画で処理していくのかをまとめて報告することになります。
これらの作業も、すべてモニタリング報告書に記載していくこととなります。
あや
きよみ
モンブラン
あや
モンブラン
臨床開発モニター(CRA)の年収・給料や福利厚生とは?
CRAは非常に多忙ですが、それに見合った収入を得られる可能性が高い職業です。
不慣れなうちには薬剤師の平均年収よりも低い賃金で働いていくことになりますが、昇給や役職を持つことによってどんどん待遇は改善され、場合によっては1000万円を超える年収を得ることも夢ではないです。
CRAの年収
- 平均年収:650万前後
- 未経験から転職した場合の平均年収:430万円〜500万円
CRAの場合、入社して数年間は薬剤師の給料より低い場合も多くありますが、仕事を覚えでできる業務が増えると、給料の上がり幅が非常に大きいことが特徴として挙げられます。
1年で30万円以上年収が上がるという例もよくあることで、5〜10年のキャリアを積むことができれば薬剤師の平均年収を超える収入が得られるのです。
外資系管理職なら年収1000万以上
管理職であれば年収1000万以上、部長クラスになると年収1200万も目指すことができるのが、CRAのすごいところ。
ただし、外資系の企業ですので英語での意思疎通が当たり前になり、管理職であればすべて英語で会話ができるのが当然といったレベルのものを求められます。
その上、正社員としてフルタイムで働き続ける必要があり、何らかの原因で働けない期間や短時間勤務とすることが必要になった場合には、出世コースから外されてしまうということもあるのです。
現在は製薬会社が外部委託の傾向を強めているため、CRA経験者が転職するのであれば年収や待遇などアップできる可能性が高くなっています。
たとえ未経験だとしても、今後も成長が見込まれる業界ですので、将来的に高い年収を得られる可能性は非常に高い職種だといえるでしょう。
大手開発業務受託機関(CRO)の平均年収
大手CROの平均年収
- シミックホールディングス(株):834万円
- イーピーエス(株):814万円
- (株)リニカル:663万円
データ元:2018会社四季報
CRAに転職する際には、どんな資格を持っているか、どんなスキルを持っているかによって年収は大きく変動します。
薬剤師として採用された場合には、資格に対するプラスアルファも加わって400万円以上になりますが、資格やスキルの種類によっては300万円台の年収を提示されてしまう人もいるのです。
その逆に、経験者として転職した場合には700万以上提示されることもあり、役職を得ることで1000万円以上の収入を得ていくこともできるため、年収の幅が非常に広いのもCROの特徴です。
平均年収にとらわれず、自分の資格・スキルを高く買ってくれる企業を選んでいくべきでしょう。
薬剤師から臨床開発モニター(CRA)に転職する際の注意点
薬剤師の仕事とCRAの仕事は全く異なります。その違いに戸惑ってしまわないように、ここで転職する際の注意点を確認しておきましょう。
まず、CRAとなることで、今までのように調剤業務や患者と関わることは一切なくなります。
基本的に都心部のオフィスビルに出勤して業務を行い、複数の医療機関を訪問することになるのです。
対外的な交渉や説明も業務の重要な部分を占めるようになるため、勤務中の服装はスーツでいることが当然になります。
また、出張や残業も多い職業であるため、CRAの仕事内容と自分の求めるライフスタイルが合致していかどうか、よく吟味した上で転職の判断をした方が良いでしょう。
やりがいと収入を両立できる仕事ですが、自分の時間を犠牲にしなければいけない部分も必ず生まれてしまいます。
自分の時間を大切にしていきたいというのであれば、CRAという職業はオススメできないものとなります。
薬剤師から臨床開発モニター(CRA)に転職した方のインタビュー
CRAに転職を考えるのは、薬剤師や看護師、臨床検査技師などの医療系資格を持つ人や、理工学部などの理系大学出身者です。その中でも、薬剤師からCRAに転職する人が格段に多くなっています。
実際に薬剤師からCRAに転職した人のインタビューをご覧ください。
インタビュー1
最初は、整形外科領域の第Ⅲ相臨床試験にCRAとして携わりました。
初めは業務に慣れるまでかなり苦労しましたが、複数の医療施設でモニタリングして、治験を大きな枠で見ることができるのでやりがいを感じています。
1つ1つの症状や患者対応をすることはできないけど、カルテや検査結果上では把握することができるので、入社前は患者と関われなくなるの点に悩みがありましたが、直接関わるか間接的に関わるかの違いで、患者のための業務には関わりないので業務に満足しています。
インタビュー2
転職活動当初は、不採用が続き続き心が折れそうでしたが、4ヶ月の転職活動の結果、1社CROから内定をもらうことができました。
現在は、呼吸器系の疾患に関する治験のプロジェクトチームの一員として仕事をしています。
新薬開発に主体的に関われますし、医薬以外にも病気に関する知識も深まり日々の業務が楽しいです。
治験を支える役割をもつCRAという仕事は、多忙ながら非常にやりがいのある職業です。
毎日の業務がそのまま自分の成長に直結し、さらに新薬の発売によって世のため・人のためになる社会貢献のできる仕事なのです。
薬剤師であった時とは違い患者との直接的な対話はできなくなりますが、新薬の開発を通して今まで以上のたくさんの患者の人生を救うことができます。
現在成長過程にある業界ですが、その人気はどんどん高まっており、簡単に転職することはできないかもしれません。CRAを目指すのなら、自分の中のビジョンを明確にし、しっかりとした目標設定をして臨んでください。
臨床開発モニター(CRA)に転職したい薬剤師の良くある質問
臨床開発モニターになるために必須の資格はありますか?
特定の資格が必要なわけではありませんがMR、CRC、看護師、薬剤師、臨床検査技師の実務経験3年以上が望ましいです。
英語力はどの程度必要になりますか?
グローバルプロジェクトになると英語力そして、医薬英語ができる必要があります。管理職だと英語ができて当たり前という状況です。
未経験でも臨床開発モニターへ転職できますか?
臨床開発モニターに中途転職される方のうち約6〜7割は未経験者になります。
薬剤師での業務歴が1年しかないのですが、転職はできますか?
正直採用されづらいかと思われます。少なくとも2年半以上の経験があれば合格率は上がります。
パソコン操作が苦手ですが大丈夫ですか?
全くできないのは問題ですが、ワード、エクセルが使用できれば問題ありません。
パートタイムでの就業は可能ですか?
経験者であれば可能ですが、未経験だとまず採用されません。
CRAの仕事は、医療に関わる仕事の経験は当然のこと、国際共同治験では英語能力も高いものを求められますし、事務作業も多いことからパソコンに関するスキルも求められます。
業務量が多いため、一人の抱える仕事も多くなりがちですので、努力する姿勢を持ち、しっかりと覚悟を決めて臨むべきでしょう。
パートタイムや時短勤務などは基本的に求められている業界ではありませんが、様々な経験を積んだベテランCRAであるのなら、将来的なフルタイム勤務を約束することで可能かもしれません。
ただし、未経験であるのなら、あきらめた方が良いでしょう。
きよみ
あや
モンブラン
あや
モンブラン
あや
モンブラン
あや
きよみ
未経験から働ける臨床開発モニター(CRA)の求人は少ない!
薬剤師から臨床開発モニター(CRA)に転職するのであれば、30歳までに行動しなければいけません。
製薬会社と二人三脚で治験を進めていくCROの中では、30歳を超えてしまうと製薬会社側からの意向によって採用率がぐんと下がる傾向にあります。
CRAへの転職では、人気のある職種である上に、求人数は少ないので倍率も高く、しっかりとしたビジョンの設定と努力できる姿勢を示していくことが大切になります。
なんとなく面白そうなどといった漠然としたイメージや、将来年収が高くなるからといった利己的な理由では、長続きはしないでしょう。
求められる人物像とスキル
CRAへの転職では、未経験者の募集は少なく、臨床経験年数、営業経験、年齢制限、社会人経験、さらには英語能力までも問われます。
多少条件に不足している程度なら、勉強に対する姿勢や情熱をアピールすることで採用を勝ち取ることはできるかもしれませんが、ライバルとなるのはすべての項目をクリアしている人ばかりです。
転職活動を行う前に、自分が求められている人材に適しているのか、しっかりと確認してください。
求められるスキル
- ドクターや看護師など医療機関関係者との対応が可能なコミュニケーション力
- TOEIC 700点以上もしくはそれと同等の語学力
- 基本的なビジネスマナー
- Word、Excel使用経験
- 文書作成能力
CRAの業務は、医師やCRCとの密接なやりとりの上で成り立ちます。
コミュニケーション能力が低い人では、決してできない業務です。
意思疎通のミスが、治験全体に影響する問題に発展してしまう危険性もあるため、まずは相手を不快にさせないだけのビジネススキルを持ち、相手の気持ちを汲んだ仕事ができなければいけないのです。
様々な契約書や報告書を作成することも求められるため、基本的なパソコンスキルに加えて、正確な文書を書くことができる能力も求められます。
現在の自分に足りない部分があれば、できるだけ早く修得できるように勉強をしていってください。
CRAの求人情報
治験最大手のシミック株式会社、3年以上の臨床経験があれば未経験応募可能
参照:マイナビ薬剤師
未経験でも安心の2ヶ月間の研修、ロールプレイング
参照:リクナビ薬剤師
まとめ:治験を成功に導くCRAの業務、多忙でもやりがいと収入は大満足!
治験を俯瞰して見つめ、プロトコルに準拠した進行を管理するCRAの業務は、非常に多忙なものです。
一つの治験薬を複数の医療機関で同時に進行していくため、全体の管理や症例の確保など、CRAは日々新薬を世に送り出すために忙しく働いています。
非常にやりがいのある仕事であり、忙しさに見合った収入を得ることもできるCRAという働き方、今後もどんどん成長していく職業だと考えられています。
そんなCRAとして、薬剤師としての能力を活用してみてはいかがでしょうか?
CRAの求人を多く扱う転職サイトとは?
薬剤師からCRAという新たな業界への転職では、業界の動向や各企業の状況など、分からないことがたくさん存在します。
自分の求める働き方をするためには、業界や企業の情報収集は欠かせないのです。
ですが、未経験の業界で、自分自身で情報を得ていくというのは、非常に難しいもの。
そこで、転職するための情報収集のためにも、転職エージェントから情報収集をしていきましょう。
大手の転職サイトでは、求人の質を維持するために情報収集を綿密に行っており、求職者にもその情報を提供しています。
専属の転職コンサルタントが面接の対策や応募書類の添削などのサポートも行ってくれるため、有利に転職活動を進めることができます。
有名な転職エージェントですと、マイナビ薬剤師、リクナビ薬剤師、薬キャリエージェントがありますが、特にマイナビ薬剤師は、職場の内部情報を熟知している上、交渉力にも定評があるので年収を下げずにCRAへの転職が期待できます。
モンブラン
名前や連絡先などの必要事項を記入したら登録完了です。登録後は、担当コンサルタントから電話で連絡がきますのでご自身の状況や職場の悩みをまず相談しましょう。心強いサポートをしてくれますよ。