治験は被験者に治験薬を服用してもらっただけでは終了となりません。
被験者の情報や服薬した結果などをデータとして管理することで、初めて意味のあるものとなるのです。
治験担当医師が作成した症例報告書は、そのままの形ではデータとしては不十分。しっかりとした解析を行うことが重要となります。
今回は、治験で得たデータを解析することに特化した職業である統計解析職(SA)についてお話ししていきます。
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統計解析職の具体的な仕事内容
統計解析職の業務は、その名前の通りデータを統計解析することにあります。
データマネジメント職がデータ化したものを生物統計の手法を使って解析し、医薬品の有効性や安全性を数値的データにまとめることを主な業務としています。
ここで、統計解析職の業務について確認していきましょう。
統計解析(SA)の仕事
- 集積されたデータの管理
- 統計解析手法の検討、実施
- 症例データを統計解析及び評価
- 科学的根拠を加えてエビデンスの構築
- 臨床試験の統計的観点からの立案
1、集積されたデータの管理
得られたデータは、製薬会社にとって貴重な財産となります。
臨床試験を通して得られたデータを解析し、必要に応じて活用できるようその結果を蓄積・管理することも統計解析職の重要な業務です。
2、統計解析手法の検討、実施
統計解析では、SASなどの統計解析を行うソフトウェアを活用し、その治験で必要となるプログラムを独自に作成していきます。
それぞれの医薬品に最も適した解析手法を使用するための検討を重ねたうえで、統計解析は実施されていきます。
3、症例データを統計解析及び評価
現場から集められた症例報告書を用いて統計解析を実施していきます。
ただし、生のデータからでは統計解析を実施することは困難であるため、データマネジメント職が統計解析用に調整したデータを用いて解析は実施されます。
統計解析を実施した結果は正式な情報として厚生労働省に報告されるため、もっとも重要で重い責任を伴う業務といえるでしょう。
4、科学的根拠を加えてエビデンスの構築
統計解析を行うことにより、エビデンスを構築することができます。
実際の臨床試験を経て得られたデータは、治療の有効性を判断する上で、非常に有益な情報となります。
現代医学で大切なことは、経験則で使用されている治療ではなく、しっかりとした科学的な根拠を持った治療であるため、それを構築できる統計解析職の業務は、今後の医療を支える役割も持っているのです。
5、臨床試験の統計的観点からの立案
信頼性を持ったデータを得るためには、何例以上の症例が必要となるのか、統計解析をする立場からの臨床試験への提案・立案を行っていきます。
治験実施計画書を作成する段階からチームに参加し、医薬品の効果や安全性を保証できるデータを得るためのサポートを行っていきます。
統計解析職が働く職場は製薬会社や受託臨床試験実施機関(CRO)
統計解析職が力を発揮できる職場は、そう多くありません。
基本的には臨床試験を実施している企業での勤務となります。
臨床試験を実施する必要がある職場と言えば、製薬会社や受託臨床試験実施機関(CRO)が中心となりますので、双方についてそれぞれ解説していきます。
製薬会社
製薬会社における統計解析職は、自社製品である新薬の治験実施に関わる業務を遂行します。
治験実施に伴う統計解析的な視点からの治験実施計画書の作成補助を行い、得られたデータを用いて統計解析を行い、そのデータをもとに厚生労働省への申請用の書類を作成することが業務となります。
自社製品に対する深い理解を持ち、スペシャリストとしての統計解析を実施することになるでしょう。
製薬会社において、治験によって得られた情報は大切な財産であり、それを管理・活用する統計解析職の業務は非常に重要な位置を占めています。
それだけに高い専門性と能力を要求される、非常にハードルが高い勤務先だと言えるでしょう。
受託臨床試験実施機関(CRO)
薬事法の改正により、治験業務のアウトソーシングが可能になり、多くの製薬会社がCROを活用するようになりました。
CROでは製薬会社に代わって治験業務を遂行していくため、そこに勤務する統計解析職には幅広い対応力が求められることになります。
実施される治験薬に対して、最も適した統計解析を実施しなければならず、臨機応変に対応できるジェネラリストとしての統計解析職が必要になります。
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統計学の専門性以外にも幅広い分野の専門性が必要
統計解析職に必要とされるスキルは、生物統計学の知識と運用経験、さらにSASなどの統計解析に特化したプログラムを的確に活用する能力も必須です。
統計学だけの知識では、現代の革新的な技術を活用した解析には物足りません。
プログラミング技術やデータを管理するシステムの構築・運用などまで、統計解析職には求められているのです。
疾患ごとに評価項目が異なるため最も適した解析手法を選ぶ必要がある
治験が実施されている疾病によって、必要になる検査項目や評価項目は異なります。
それらが異なるということは、データを利用するための統計解析手法も異なってくることになります。
統計解析職には、数ある統計手法の中から最も効率的に情報収集できる手法を模索し、適宜実施していくことが求められるのです。
担当プロジェクトの繁忙期が重なることも
治験がどの程度の期間で実施されるかは、その治験薬によって異なります。
症例を集めて統計解析を実施するタイミングはそれぞれに異なるとはいえ、偶然それらのタイミングが一致してしまうことも少なくありません。
複数の治験を同時進行しているCROではその傾向が強くなってしまいますが、もしこういった繁忙期が重なってしまった場合には、納期に間に合わせるために残業などの対応を迫られることも覚悟しなければいけません。
統計解析職の年収・給料と福利厚生
治験は様々な職種が協力して実施していきますが、その中でも統計解析職は治験成功のカギを握る責任重大な職務です。
繁忙期が重なってしまうことで、さらに業務は過酷となり、責任も重くなってしまいます。
では、それだけの責任に見合った待遇は与えられているのでしょうか。
年収の平均値などから確認していきましょう。
統計解析職の平均年収
- 平均年収:500万円~800万円
- 平均月給:30万円~50万円
- ボーナス:100万円~200万円
- 管理職の年収:800万円~1200万円
統計解析職は企業に所属して業務を行います。
初めのうちは収入が低めで推移しますが、経験と実績を積んでいくことで昇給などの待遇は約束されており、企業の手厚い福利厚生を受けることも可能です。
国内外資問わず、統計解析職でマネージャークラスになると年収1000万円を超えていくことも当たり前にあるのです。
忙しい時期には残業などで処理しなければいけない事態となりますが、休暇などの待遇はしっかりと用意されており、年休は120日以上、基本的には土日は休みになります。
統計学、生物統計学の知識やグローバルスタッフとのコミュニケーション力が必須条件
統計解析職では専門的な知識と経験が重要視される業務である為、未経験者の中途採用は極めて少なくなります。
また、医療などの専門的な知識は必要とされないので、薬剤師からの転職は一般的ではありません。
昨今の治験は国際的に共同治験を実施するものが多くなっており、それに伴って統計解析を行う際にも各国のスタッフや統計解析職との連携が不可欠です。
ただパソコンで解析を行っていれば良いというものではないため、認識を誤ったままで就業すると大変なことになってしまうでしょう。
国際的な対応が必要なので、治験を実施するための専門的な英語力はもちろん、コミュニケーション能力も高いものが要求されることを覚悟しておきましょう。
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薬剤師の実務経験があれば応募できる統計解析職の求人情報
年収500万円保証、内資系製薬会社でも統計解析求人(千代田区)
参照:マイナビ薬剤師
薬剤師経験が3年以上があれば優遇、土日休みの統計解析求人(飯田橋駅)
参照:リクナビ薬剤師
年収600万円も交渉次第、大手CROでの統計解析求人(大阪府西区)
参照:マイナビ薬剤師
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まとめ:統計解析職は激務!やりがいと待遇はグッド!
統計解析職は、治験に係る機密情報を扱う大変重要な仕事です。
その責任は重く、業務内容も非常に忙しいものとなりますが、それに見合った待遇も用意されているのが統計解析職の仕事です。
年間の休日はしっかりと用意されていて、給料もスキルと経験でどんどんアップすることが可能となり、企業にとっての財産となる情報を作り出す仕事ですので、そのやりがいも抜群です。
その分、就職するための条件も難しいものとなりますが、統計学を専攻していたのなら、可能性はゼロではありません。興味があればチャレンジしてみてください。