治験は被験者に新薬を服用させるだけで終わりではありません。
服用した結果や副作用の状況、患者の状態などの詳細なデータを解析することによって、やっと実施した意味が生まれるのです。
実は、この治験のデータなどを解析しやすい状態に整える業務も、職業として存在します。
今回は統計解析のための詳細でわかりやすいデータベースを作成するプロフェッショナル、データマネジメント職(DM職)についてお話しします。
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データマネジメント職の具体的な仕事内容
DM職が行う業務は、一言で言ってしまえばデータの整理と管理です。
臨床試験や製造販売後調査における臨床データのマネジメント及び管理を行い、臨床試験のデータを整合性のある解析可能なデータにすることを業務としています。
データベースの構造をプログラミングする業務を行う場合もありますが、そちらに関しては通常はプログラムの専門家が対応するのが一般的です。
データマネジメント職の仕事
- 臨床開発モニターが集めた症例報告書(CRF)をデータベース化
- データのチェック(目視及びプログラムスキャン)
- データに問題がある場合は臨床開発モニターに調査依頼
- データを固定し、統計解析部へ提出
臨床開発モニターが集めた症例報告書(CRF)をデータベース化
収集されたCRFは、そのままの状態で統計解析できるものではありません。
収集した生のデータを統計解析できる正確な状態にするため、情報をあらかじめ設定されているシステムに登録を行っていきます。
入力の不備をなくするため、数人でチームを組んで作業を行うことが一般的です。
データのチェック(目視及びプログラムスキャン)
入力されたデータベースのチェックを行います。
プログラムによってデータのスキャンを行い、整合性の合わないデータを洗い出したのち、目視によってもデータの確認を行います。
プログラムのチェックでは、入力されている数字の不備の確認。
目視によるチェックでは、プロトコルに準拠して実施されたかなどの人間の目でなければ判断できないことを確認していくのです。
データに問題がある場合は臨床開発モニター(CRA)に調査依頼
チェック段階でCRFのデータに不備を発見した場合には、CRAに対して調査依頼をします。この調査依頼をクエリーといいます。
CRAは問題点の確認を治験実施機関において行い、その結果をDM職に報告します。
解答をもとにデータの修正を行い、すべての問題点がなくなるまでこの作業を繰り返していきます。
データを固定し、統計解析部へ提出
問題点の修正がすべて終了し、最終的な完成データとなった状態をデータの固定と言います。
データの固定を経て、最終的な統計解析を行う部門へのデータ引き渡しを行い、DMの業務は終了となります。
データマネジメント職が働く勤務先
DM職が働くことができる職場は限られています。
治験業務に関わる業務であるため、まずは治験に関わる企業である必要があります。
そのなかでも、治験によって得られたデータを整理・管理することが必要な企業と言えば、CROか製薬会社となるでしょう。
製薬会社
製薬会社では、自社医薬品の治験や市販直後調査におけるDM業務を主に行うことになります。
治験のデータは期間が決まって収集されますが、市販直後調査では全国からさまざまなタイミングでデータが送られてきます。
それらのデータを適切に収集・管理することが求められる業務です。
受託臨床試験実施機関(CRO)
CROでは複数の企業からの治験実施を請け負っています。
そのため、複数の医療機関や製薬会社と同時に対応しなければいけない場面も生まれ、膨大な情報を的確に処理する能力が特に重要となります。
クライアント企業で就労することも!
CROでDM業務を行っている場合、クライアントである製薬会社において作業を行うこともあります。
その場合、自分の能力を認めてもらうことで、製薬会社からスカウトを受けることもあるのです。
自社医薬品に深く関わることができるため、その道のスペシャリストとしてのキャリアには最適ですが、基本的にスカウトがある場合には会社規模が小さな製薬会社からのことが多く、大規模な企業では滅多にありません。
しかも、DM職は状況によって社員整理の対象に挙がってしまうこともあるため、転職する際には十分な検討が必要となるでしょう。
クライアントや薬剤によって運用方法が異なる
CROで働くDMは、治験実施におけるデータ処理のスペシャリストとなります。
依頼を受けて様々なクライアントから様々な医薬品の治験を請け負っているのです。
治験を実施する際には必ず治験実施計画書やGCPなどの関連法規に従わなければいけません。
この従うべきルールは実施される治験ごとに設定されるため、クライアントとなる企業や医薬品により、毎回異なるルールでの作業が必要になります。
ルールを準拠した上で最大の能力を発揮できるような臨機応変な対応力が必要となるのです。
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DM=黙々とパソコンに向かって業務を進めることではない
DM職の業務を聞いていると、四六時中パソコンに向かって黙々と仕事をしているように感じますが、実際にはそうではありません。
臨床開発メンバーと議論したり、収集されたデータに不整合な点があればモニターや医療機関に確認をしたり、社内外を問わずに密に連携を取らなければいけません。
与えられたデータを管理するだけではなく、こういったやりとりをすることが必要になる為、専門的な知識が求められる業務なのです。
そしてなにより、モニターや解析、安全性などあらゆる部門と連携を取りながら業務を実施するため、思っていた以上に人を相手にする仕事になります。
人間関係を円滑にできることが重要なスキルとなりますので、引きこもっていれば仕事ができると考えているのなら、大きな間違いです。
そうはいっても、DM職のもっとも重要な職務は、データ構造やシステムのリレーション作業などシステマティックな側面です。
そういった業務ができなければ話になりませんので未経験での求人は皆無に等しく、臨床開発や統計をバックグラウンドに持つ人が多く働く職業です。
EDC(Electronic Data Capture)やCDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)の知識が求められる
現代の治験では、紙でCRFを作成することは稀で、ほとんどの場合に電子化したCRFを採用しています。
この電子化したCRFを、インターネットを用いた専用回線経由で直接CROや製薬会社に提出するシステムがEDCです。
すでにデータが電子化されていることから、入力などの手間を大幅に削減することができ、治験実施機関に何度も足を運ぶことなく、効率的に治験の運用ができるようになります。
このCRFを電子化してやり取りする際、データを作成する基準がなくては、複数の治験実施機関で共通した認識での運用が困難となることが予想されます。
そのため、データ作成の世界標準を準備することが必要となりました。
この世界標準を制定している団体をCDISCといい、またそこで作られた世界標準のこともCDISCと呼ばれています。
これからの時代にDM職に就くのなら、これらの電子的な発展に関わる知識の更新も、必須の事項となります。
データマネジメント職の年収・給料と福利厚生
データマネジメント職の年収は知識や経験によって大きく上下します。
治験に関わる業務での実績がなく、完全に未経験での転職はあまり一般的ではありませんが、もしそうであれば年収300万円代となることもあり得るのです。
収入に幅があるため、平均年収はあくまでも参考にしかなりませんが、業界の平均を確認しておきましょう。
データマネジメント職の平均年収
- 平均年収:400万円~600万円
- 平均月給:25万円~40万円
- ボーナス:80万円~120万円
- 管理職の年収:600万円~800万円
一般的には400万円台から600万円代で推移しますが、大手企業の管理職となれば、1200万円を超える年収を提示される例もありました。
ただし、それはあくまでも一部の例外であることをご理解ください。
DM職は症例報告書の回収時期ではかなりの残業が予測されており、肉体的にもつらい部分があるかもしれません。
ただし、企業での就業になりますので、残業計算はしっかりと行ってくれますし、昇給も確実に実施されていきます。福利厚生は手厚く用意されています。
臨床開発モニター経験者からの異動・転職者が多い
データマネジメント職を未経験での求人応募の場合、臨床開発モニターの就業経験が必須であることが多くなっています。
薬剤師の経験や知識が役に立つことはありますので、優遇条件として記載している企業もありますが必須の項目というわけではなく、むしろ薬剤師である必要はない職業です。
データベースの構築までが業務となっている場合にはプログラミングのスキルなどが必要になってきますが、厳密にはDM職がプログラミングまで担当することはまれで、もっとも重要なのは治験に関わる臨床検査の知識となります。
治験の作業工程や治験担当医師の性質などは、DM職がデータの調査を行う際にも重要な情報です。
円滑に作業を遂行するためには、それらの知識を持っていることが重要となり、結果としてCROで経験を積んだ臨床開発モニターの経験が強く活きてくる業務となるのです。
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まとめ:データマネジメント職は治験運営のキーパーソン!データを通して治験を支えよう!
DM職は情報を管理することによって医療の発展に寄与している職業です。
DM職がデータの整理を終わらせてからは生データに触れることは出来なくなり、実際のデータを統計解析可能なデータに変換する際の最後の砦としてDM職は存在しています。
治験に関わるデータは、製薬会社にとって大切な財産です。
現代は情報社会と言われ、情報の価値と重要性はどんどん高まっています。それらを管理するDM職は、重要な職務であるのは、言うまでもないでしょう。
臨床の現場で業務を行うCRAとは違い、本部において治験に関わる業務ですが、マネジメント能力やコミュニケーション能力など、様々な総合力が試されるのです。
データの管理などが得意な人に向いている職業ですので、自分に適性がある人には天職となるでしょう。
自分の性格に合っていると思うのなら、是非チャレンジしてみてくださいね。