年々拡大を続けるペット産業は1.4兆円規模の巨大市場となり、現在も成長を続けています。
ペットは家族の一員として捉えられ、深く生活の中に浸透している現代では、薬剤師としてもペット産業に携わる場面が生まれてきました。
今回は、ペット産業に携わりたい薬剤師のために、薬剤師が携わることができる4つの仕事について紹介します。
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動物医療市場の最新動向とは?
ペット関連の市場は年1%(140億円)、安定的に成長しており、2018年現在は1兆4,689億円の市場規模となっています。(矢野総合研究所調査)
そのうちの5割が生体販売や医療、保険などのサービスにより成り立っているため、薬剤師が関わっていく余地は大きく存在します。
アメリカでのペット市場は6.2兆円規模で、日本の約5倍にもなります。
アメリカの人口が3億2000万人であることを考えると、日本の人口1億2000万人の3倍程度の規模になっているのが妥当だと判断できますので、日本のペット市場規模はまだまだ伸びる余地が大いにあります。
以前には動物用医薬品は動物病院に行かなければ入手できない珍しいものでしたが、最近ではドラッグストアでも動物用医薬品を置くようになってきています。
これは、ペットに対する医療が日本人に浸透してきている証であり、今後もその傾向は強くなっていくと予想されるのです。
動物病院数は毎年200件以上増加
ペットの数が増えていくことに応じて、その治療を行う動物病院の数も年々増加しています。
ただし、個人経営の動物病院が増加していても、その中で薬剤師が勤務できる病院は数えるほどしかありません。
そのため、薬剤師が動物の臨床現場に関わっていくことは、まだまだ少ないのが現状です。
動物病院数 | 前年度比 | |
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2010年 | 14,353軒 | +180 |
2011年 | 14,517軒 | +164 |
2012年 | 14,703軒 | +186 |
2013年 | 14,956軒 | +253 |
2014年 | 15,198軒 | +242 |
2015年 | 15,463軒 | +265 |
動物に関わる薬剤師の4つの職場
薬剤師が動物に関わることができる仕事は限られています。
どれを選択したとしても、薬剤師として直接動物に触れることはほぼ無く、動物向けの医薬品を通して関わっていくことになります。
薬剤師が動物に関わる職場
- 動物病院
- 動物医薬品メーカー
- 動物医薬品卸企業
- 動物医薬品検査所(農林水産省)
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動物病院|薬剤師の仕事内容と年収とは?
薬剤師法19条により、獣医師は自己の処方により調剤が可能とされています。
そのため、多くの個人病院では薬剤師を必要としておらず、獣医師が薬を処方し、そのまま調剤しています。
しかし、ペットを飼う家庭の増加に伴い、来院するペット数は増加しており、獣医師一人で処理を行うことに限界が生じている場合もあります。
大学付属の動物病院の場合、作業効率化のために薬剤師を設置することもあるのです。
動物病院での仕事内容
動物病院での薬剤師の業務は、人間相手のものと大差ありません。
処方箋の監査をし、調剤を行って、適切な医薬品をペット・患畜に届けることにつきます。
薬剤師の主な業務
- 処方箋をもとに動物用医薬品を調剤
- 動物の種類・体重などによる投与量のチェック
- ペットフードやサプリメントなどの相談対応
このように、普段人間相手に行っている業務が動物向けになるだけで、大きな違いは生まれません。
ただし、動物の場合には種類・体重によって投与量が大きく変動します。
各動物によって禁忌薬も変わってきますので、獣医学領域の勉強もしっかりと行っていかなければいけません。
年収は400万円程度、平均より100万円以上低い水準
動物病院の薬剤師の収入は決して高くはなく、年収400万円台が得られれば満足しなければいけません。
病院努めの獣医師でさえも、平均年収620万円程度に抑えられているため、当然薬剤師はそれよりも少なくなります。
薬剤師がいなくても動物病院は運営できるのですから。賃金に寄らず、勉強を惜しまず、それでも動物のために働きたいという人がチャレンジしていくべき職場といえるでしょう。
動物病院が募集する薬剤師求人は極端に少ない
動物病院からの求人は、獣医師・看護師・トリマーの募集が一般的なもので、薬剤師の求人が掛かることはまずありません。
獣医師が15名以上も勤務している大型動物病院でも薬剤師の募集はなかなかありません。なぜなら薬剤師を設置している動物病院では、既に必要数の薬剤師が充足しているのです。
人間向けの病院と違って法律に定められた設置基準は存在していないことも、薬剤師の求人が少ない原因となっています。
求人の可能性があるとしたら、大学付属の動物病院において、ほんの数名程度の欠員補充になります。
大学付属の動物病院一覧
大学名 | 所在地 |
酪農学園大学附属動物医療センター | 北海道江別市 |
帯広畜産大学動物医療センター | 北海道帯広市 |
北海道大学動物医療センター | 北海道札幌市 |
北里大学獣医畜産学部附属動物病院 | 青森県十和田市 |
岩手大学動物病院 | 岩手県盛岡市 |
東京大学動物医療センター | 東京都文京区 |
東京農工大学動物医療センター | 東京都府中市 |
日本獣医生命科学大学付属動物医療センター | 東京都武蔵野市 |
日本大学生物資源科学部動物病院 | 神奈川県藤沢市 |
麻布大学獣医学部附属動物病院 | 神奈川県相模原市 |
岐阜大学動物病院 | 岐阜県岐阜市 |
大阪府立大学生命環境科学部附属獣医臨床センター | 大阪府堺市 |
鳥取大学農学部附属動物医療センター | 取県鳥取市 |
山口大学動物医療センター | 山口県山口市 |
宮崎大学農学部附属家畜病院 | 宮崎市 |
鹿児島大学農学部附属家畜病院 | 鹿児島県鹿児島市 |
動物用医薬品メーカー|薬剤師の仕事内容と年収とは?
動物用医薬品を取り扱っているメーカーには、動物用医薬品を専門にしている業者と、人間用の医薬品も同時に取り扱っている業者の2つが存在しています。
医薬品メーカーでは医薬品を管理するために薬剤師が必要となりますので、動物用医薬品に関わりたい薬剤師にとっては最も就職しやすい業種といえるかもしれません。
動物用医薬品メーカーでの仕事内容
動物用とはいえ医薬品ですので、当然そのメーカーには管理薬剤師の設置が義務付けられています。
行っている業務は通常の医薬品メーカーと同じものだと考えて差し支えありません。
薬剤師の主な業務
- 医薬品の品質管理
- 営業職への医薬品指導
- DI業務・問い合わせ対応
- 薬事審査の事務処理
製造・流通における医薬品の品質管理が主な業務となり、そのほかにもDI室の役割も担っています。
外部・内部の問い合わせに対して対応することが必要になり、定期的なMR職への指導も行っています。
薬事申請業務を兼任している場合では、厚生労働省などとのやり取りも発生し、治験などに係る専門的な知識も必要になります。
年収は350万円~500万円、行う業務によって年収に幅
動物医薬品メーカーの薬剤師は、年収はそれほど高くはありません。
ただし、医薬品を扱う企業は総じて大規模な企業ですので、毎年の昇給や待遇はしっかりとしている所が多く、最終的には薬剤師の平均年収以上にはなっていきます。
管理薬剤師業務は、基本的に残業はなく、休日もしっかり休めるので、ライフワークバランスを重視する人に向いている就職先といえます。
給与は経験や担当業務によって上下しますが、一般的な求人では350万円~450万円での募集が多くされています。
薬事申請をメインに行う場合では、500万円以上での年収も可能です。
動物医薬品メーカーの大手企業一覧
会社名 | 特徴 |
フジタ製薬 | 2016年オリックス株式会社から出資 |
ゾエティス | 2013年ファイザーから分社化、ペット・牛向けの医薬品に強み、アニマルヘルス世界シェアNo1 |
エランコ | 米大手製薬メーカーであるイーライリリー傘下、ペット向けから家畜全般の動物薬を扱う |
ベーリンガーインゲルハイム | ドイツが本拠地、ペット及び豚向けに強い |
メルク | 米国の製薬メーカー、アニマルヘルス事業 |
ビルバック | フランス本拠地、ペット向け動物薬 |
フィブロ | 米国に本拠地、畜産向け医薬品 |
動物医薬品卸企業|薬剤師の仕事内容と年収とは?
メーカーから動物用医薬品を買い付け、動物病院やドラッグストアなどに卸売りをしている企業も、薬剤師が動物用医薬品に携わることができる職場の一つです。
医薬品卸企業にも管理薬剤師が必要となり、それが動物用だとしてもその規定に変わりありません。
動物医薬品卸企業での仕事内容
動物医薬品卸企業では、営業所にて管理薬剤師としての業務に従事することになります。
人間用医薬品を取り扱っている企業の管理薬剤師が行う業務と同じものと考えてください。
薬剤師の主な業務
- DI業務・問い合わせ対応
- 在庫の品質管理、使用方法・販売方法の管理
- 伝票・書類管理
- 営業職などへの教育・指導
動物医薬品卸企業で働く薬剤師には、様々な法律知識や医薬に係る知識が必要になります。
メーカーに寄らず、公平な立場での情報収集・活用が必要になり、経験を積んでいくことで営業職への指導を行うことも必要になるのです。
卸業者ですので、販売に係る伝票管理や受注作業を薬剤師が受け持っていることもあります。
年収は350万円~450万円、平均以下の水準
動物医薬品卸企業での薬剤師の年収は、決して高くはありません。
ただし、企業での勤務ですので、昇給などの待遇はしっかりしている場合が多く、最初は低い年収でも、長く勤めていくことで薬剤師の平均年収以上は稼ぐことができるようになります。
一般的な動物医薬品卸企業の薬剤師求人の年収は350万円~450万円程度となっています。
卸企業は在庫を抱えるため、都心ではなく地方や郊外の倉庫勤務
卸企業では、医薬品の在庫を抱えておく倉庫を用意しています。
大手企業では流通倉庫を別に確保していることもありますが、そうでなければ営業所と倉庫を兼用している場合がほとんどです。
薬剤師は倉庫管理薬剤師として従事しますので、その勤務場所は当然倉庫となります。
広い土地を確保するため、倉庫の場所は郊外や地方となっていることが多く、薬剤師も倉庫のある地方や郊外で勤務しなければいけないのです。
動物医薬品卸企業一覧
会社名 | 特徴 |
MPアグロ株式会社 | 2010年4月に経営統合、主に畜水産分野 |
株式会社ファイネス | 畜水産領域および小動物領域 |
株式会社サン・ダイコー | 動物用医薬品以外にも食品関連資材、ライフサイエンスなどを取り扱う |
森久保薬品株式会社 | 卸売事業以外にもインターネットショッピング「動物ナビ」を運営 |
株式会社アスコ | ペットから産業動物まで幅広く事業を展開 |
実際の求人例
1、長野県東筑摩郡、年間休日120日以上、薬剤師手当4万円
参照:マイナビ薬剤師
2、埼玉県狭山市、創業36年の動物用医薬品卸、土日祝日休み!17時終業
動物医薬品検査所|薬剤師の仕事内容と年収とは?
動物医薬品検査所は、農林水産省の部署の一つです。
動物用医薬品の品質確保を業務としており、製造・輸入・流通などを管理しています。安全性や有効性を検証する検査も行われています。
動物医薬品検査所での仕事内容
動物医薬品検査所で働く薬剤師が携わる業務は、基本的に動物に関わる医薬品の適正使用のために行われています。
薬剤師の主な業務
- 動物用医薬品に関する検定・検査
- 製造所、販売店、診療施設などへの立入調査
- 検査に使用するための標準医薬品の有償配布
- 動物医薬品の適正使用に関する情報提供
動物医薬品検査所では、動物医薬品に係る業務を網羅しています。
人間用医薬品では、保健所や薬務課、衛生研究所などが協力して様々な業務を行っていますが、動物用医薬品では、申請や医薬品検査、立入指導などもすべて動物医薬品検査所で行っているため、非常に多忙な業務となります。
年収は530万円程度と平均値、生涯年収は民間以上
動物医薬品検査所の仕事は、国家公務員として働いていくことになります。
ですので、年収・給料などは国家公務員規定によって定められています。
国家公務員規定によれば、薬学系技術職員となる薬剤師の平均年収は530万程度となっています。
国家公務員ですので待遇は非常によく、退職金も安定しており、生涯年収でみれば民間企業よりもはるかに高い収入を得ることができるでしょう。
動物医薬品検査所で働くためには?
薬学系技術職の求人は非常に少なく、募集があること自体が稀です。
もしあったとしても、その倍率は高く、狭き門となっています。
採用してもらうためには、農林水産省が実施している採用試験に合格することが必要であり、これは国家公務員採用試験総合職(院卒者試験)相当の難易度の高いものです。
国家公務員試験ですので、受験資格に年齢制限があることも忘れてはいけません。
公務員薬剤師って実際どうなの?採用試験の難易度や生涯年収を解説
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まとめ:薬剤師の新たな居場所!今後も発展を続けるペット産業!
ペット産業に薬剤師が関わっていくのは、簡単な話ではありません。
医療現場では獣医師が医薬品までもすべて管理し、非常に多忙な業務を行っています。
医薬品メーカーなどの管理者は薬剤師である必要がありますが、そこの需要はすでに充足しており、新たな求人が出ることは非常に珍しいことなのです。
こういった状況ではありますが、薬剤師の可能性を広げるためにも、今後も成長するペット業界になんとか薬剤師の居場所を確保していきたいものです。
薬剤師のスキルを動物のために活かすため、その有用性をしっかりとアピールしていき、薬剤師の職能を広げていきましょう。