麻薬取締官は、特別司法警察職員という待遇を与えられている国家公務員です。
2013年の薬事法改正に伴い、脱法ハーブへの捜査ができるようになったことで人員の増加傾向にあります。
薬剤師資格保持者だけではなく、国家公務員一般試験の合格者なども麻薬取締官を目指すことができるため倍率は高く、簡単にはなれない職業です。
この記事では、麻薬取締官として働くための条件や仕事内容、年収などを紹介していきます。
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麻薬取締官の主な仕事内容と役割
麻薬取締官はドラマや小説の題材にされることも多い華のある職業ですが、具体的にどんな業務に従事しているのかご存知でしょうか?
曖昧なイメージのままでは、本気で麻薬取締官を目指すときの情熱に陰りが生じてしまいます。
ドラマで見るような恰好のいい姿ばかりではなく、事務作業や啓発活動などの地道な作業も非常に重要な部分となりますので、まずは麻薬取締官が日々どんな業務に従事しているのかを確認していきましょう。
麻薬取締官の仕事と役割
- 違法薬物に係る捜査
- 医療麻薬の監督、指導
- 中毒者の治療・相談・再乱用防止
- 薬物乱用防止のための啓発活動
違法薬物に係る捜査
日本では「薬物五法」において厳重な扱いが必要とされる薬物を規制しています。
「薬物五法」とは、以下のものです。
薬物五法
- 麻薬及び向精神薬取締法
- 大麻取締法
- あへん法
- 覚せい剤取締法
- 麻薬特例法
これらの法律によって薬物の使用・所持などが規制され、それを犯すことで罪に問われるのです。
この法律では規制されていない薬物の中でも、同様の効果をもたらす薬物を過去には「脱法ハーブ」などの名称で呼ばれていましたが、現在では「危険ドラッグ 」という名称で統一化されています。
この危険ドラッグに対する捜査も可能になり、麻薬取締官の業務は拡大を続けているのです。
薬物事件に関して、麻薬捜査官にも逮捕権が認められています。
通常の捜査や民間からの通報やインターネットなども含めた情報収集、場合によってはおとり捜査までも駆使して、麻薬取締官は違法薬物に関しての捜査を進めています。
被疑者の毛髪鑑定などは、公正かつ中立の立場が求められるため、麻薬取締官のなかでも麻薬捜査官とは別に、麻薬鑑定官が独立して鑑定業務を行います。
麻薬取締官は薬物事件に限って囮捜査が可能
警察官は、麻薬などの違法薬物事件においてはおとり捜査が認められていません。
違法薬物に関するおとり捜査は、特別司法警察職員としての権限をもつ麻薬取締官のみに認められている行為となります。
警察官といえども、違法薬物を所持していては罰則の対象となってしまいますが、麻薬取締官であった場合には、捜査における必要性が認められれば罰則を免除されるのです。
銃の携行と使用が可能
麻薬取締官は特別司法警察職員としての権限を持っているため、違法薬物捜査に必要が認められた場合には、拳銃や警棒などの小型武器の携行と使用が可能です。
ただし、あくまでも司法警察職員としての業務を遂行する場合に限られるため、いつでも所持していいわけではありません。
医療麻薬の監督、指導
違法薬物に関する業務だけではなく、医療用の麻薬に関する適正使用を推進するための業務も行っています。
麻薬を取り扱っている製薬会社や病院などに立ち入り調査を実施し、不正な流通や不正な使用が起こらないよう、日々目を光らせているのです。
中毒者の治療・相談・再乱用防止
薬物使用者に限らず、周囲にそういった人がいる場合の相談窓口としての業務も行っています。
違法薬物に手を出してしまうと、自分の意思だけで止めることは不可能に近いものですので、そういった人がスムーズに日常生活に戻り、二度と違法薬物に手を出さないようにサポートしています。
薬物乱用防止のための啓発活動
薬物乱用防止のための啓発活動も業務として行っています。
薬物乱用防止活動である「ダメ。ゼッタイ。」を日々運営しており、地域の薬剤師会やボランティア団体などと協力して活動を行っています。
街頭でのパネル展示や学校などでの講演も行い、日々啓発活動をしているのです。
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麻薬取締官になるには?採用試験の難易度と倍率
麻薬取締官の人員は2017年現在で約300名程度、毎年150〜200人の応募に対して15名程度の全国採用のため倍率はおよそ10倍以上という狭き門となっています。
実際に麻薬取締官となるための方法についてお伝えしていきます。
採用試験の応募資格
下記、麻薬取締部の採用試験応募資格者です。
1、国家公務員試験一般職試験(大学卒業程度)の「行政」又は「電気・電子・情報」,「化学」の受験者(ただし,最終合格を採用の条件とします)
2、薬剤師,又は薬剤師国家試験合格見込みの者で、30歳以下であること(ただし、薬剤師国家試験合格見込みの者については、薬剤師免許の取得を採用の条件とします)
厚生労働省地方厚生局麻薬取締部
国家公務員という性質上、採用人数は常に少数で、退職者が出た場合の補充目的での求人となります。
通年での募集はなく、ごく短期間で募集・採用が終了してしまうため、タイミングを逃せば1年後でなければ応募することはできません。
基本的に関東地区でのみ募集が行われており、そのほかの地域で直接求人が出ることは少なくなっています。
募集期間においては、業務説明会や麻薬取締部の見学などが行われることもありますので、時期を逃さず転職活動を行っていくことが最も大切です。
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麻薬取締官の年収・給料は公安職ではなく行政職規定
麻薬取締官は特別司法警察職員の権限を持っています。
ということは、給料も司法警察(公安職)の規定で支払われるのかといえば、そうではありません。
麻薬取締官は厚生労働省の職員であり、公安職ではなく行政職としての待遇となります。
公安職であれば、通常の行政職よりも10%程度多い給与を得られるのですが、麻薬取締官はそうではありません。
ただし、危険な業務に従事する必要がある重要な職務ですので、調整手当として、給与の補てんが行われています。
公安職ほどの給料は得られませんが、通常の行政職に比べれば高い給料を得ることができるでしょう。
麻薬取締官の給与|行政職俸給表(一)
職員数 | 140,786人 |
平均年齢 | 43.6歳 |
経験年数 | 22.0年 |
平均給与 | 410,984円 |
麻薬取締官の級別平均給与額
級 | 役職 | 年収 |
10級 | 課長(特に重要) | 551,154円 |
9級 | 課長(重要) | 510,046円 |
8級 | 室長(困難) | 461,615円 |
7級 | 室長 | 430,312円 |
6級 | 課長補佐(困難) | 403,909円 |
5級 | 課長補佐 | 387,459円 |
4級 | 係長(困難) | 362,112円 |
3級 | 係長・主任(困難) | 298,710円 |
2級 | 主任・係員(高度) | 227,314円 |
1級 | 係員 | 181,226円 |
国家公務員ですので、勤続年数が長くなるごとに給料は高くなっていきます。
50代では50万円以上の給料となることもあり、確実な昇給が約束されています。
福利厚生も公務員としてのもので非常に充実しており、退職金なども一般企業に比べれば多く得られるのです。
地方での勤務が必要になったとしても、公務宿舎の利用や住宅手当の支給など、手厚い待遇を受けることができます。
麻薬取締官のキャリアパスとは?
麻薬取締官は行政職の国家公務員ですので、基本的に行政職のキャリアパスに準じています。
採用直後には先輩職員のサポート業務がメインであり、重要な職務に従事することは稀だと言えるでしょう。
経験を積んでいくことによって責任のある職務を任せられるようになり、その段階で係長への昇進となります。
後輩への指導や現場での指揮など、責任ある立場での業務に従事するようになり、その後、さらに専門性を磨くことによって課長・室長などの管理職へとキャリアアップを図ることができます。
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「麻薬取締官」と「麻薬取締員」は何が違うの?
麻薬取締官と麻薬取締員の違いは、国家公務員か地方公務員かの違いとなります。
麻薬取締官はご存知の通り、厚生労働省に所属する国家公務員となりますが、麻薬取締員は各都道府県の職員、つまり地方公務員なのです。
警察でいえば、麻薬取締官が本庁所属の刑事、麻薬取締員が各地域を受け持つ所轄の刑事という分類となるわけです。
実際に双方が行っている業務に大きな違いはなく、どちらの職業も違法薬物の調査・摘発や、薬物がらみの事件に対する調査を行います。
特別司法警察職員という特別な権限をもっており、拳銃の携帯も可能です。
警察では違法捜査とされてしまう薬物に関するおとり捜査を行うことも認められています。
麻薬取締員になるには?
平成17年以前には、各都道府県で設置できる人数が制限されていましたが、現在ではその制限は取り払われ、その地域で必要とされる人数を麻薬取締員として設置することができるようになりました。
麻薬取締員となるには、まずは各都道府県における薬事担当課に入職しなければいけません。
薬事担当課の職員の中から知事に任命されることにより、麻薬取締員となることができるのです。
まとめ:危険で華のある仕事ばかりではない、地道な努力が重要な麻薬取締官!
テレビなどの情報を見ていると、毎日が危険と隣り合わせで華のある仕事ばかりに見える麻薬取締官ですが、その実態は、意外と地味な仕事も粛々とこなしている国家公務員なのです。
ですが、地味に見える仕事も、日本の薬事を支える重要な業務。少数精鋭で行われている業務は、忙しいながらもやりがいはひとしおなのです。
ごく少数の募集しかなく、その倍率は10倍以上という狭き門ですが、国家を支える仕事を目指してみてはいかがでしょう。
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