薬剤師の勤務条件に、社宅完備の文字や住宅手当支給の内容が記載されていることが良くありますよね。
大まかに言えば、賃貸アパートなどに住んでいる場合には金銭的な補助をしてくれるのが住宅手当、住むところを用意してくれるのが寮・社宅となります。
住宅の補助という面では同じ性質のものですが、実はこの制度によっては、損する人と得する人が生まれてしまうのです。
今回は、それらの違いとどちらがお得なのかについてご紹介していきます。
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「寮」と「社宅」に厳密な違いはない
まずは寮と社宅の違いについて把握しておきましょう。
寮と社宅の定義には、実は厳密な違いはありません。法的に考えれば、どちらも会社が用意した住宅です。
ただし、社内で区別を作っていることもある為、定義は会社ごとに異なっていることとなります。
通常は社宅と言えば世帯向け、寮と言えば単身者向けを指しますが、マンションを借り上げて寮としている場合には世帯でも入寮が可能ですし、賃貸アパートの一室を社宅としている場合には、単身者でなければ厳しい状況もあるでしょう。
寮としている場合には社員食堂などで朝夕の食事の用意がされていることもあるため、結局は会社がどのような制度で運営しているのかによって、使い分けされることになるのです。
社有社宅ではなく借上社宅が一般的に
社宅には大まかに分けて二種類存在します。
会社の資産として建物・土地を所有する社有社宅と、必要に応じて建物を借上げする借上社宅です。
社有社宅では、建物や土地が会社の資産となりますが、会社としては維持費や税金などのコストがかかってしまいます。
老朽化の心配もあるため、最近は社員ごとに希望の住宅を借り上げする借上社宅とすることが多くなっています。
社有社宅ではすでに決まった土地があり、間取りも決まってしまっているため、社員の中には不満を表す人も生まれてしまいますが、借入社宅では希望通りの地域に希望通りの間取りで賃貸することができるため、社員の満足度は大きくなります。
会社としても、借上社宅では賃貸費用を福利厚生費用として経費計上できるため節税効果が高く、社有社宅よりもメリットが大きいものです。
そのため、現在は社有社宅ではなく、借入社宅として用意することが一般的になっています。
「寮・社宅」を利用すれば課税額を少なく抑えられる
住宅手当と寮・社宅制度、どちらを利用したほうがお得なのでしょうか。
答えは、寮・社宅制度を利用することです。
一見住宅手当としてお金を支払ってもらった方が、自分の手元に一度お金が入ってくるためにお得に感じてしまうことがありますが、具体的に計算していった時には、明らかに寮・社宅制度に軍配が上がります。
住宅手当より「寮・社宅」を利用した方が手取り額が多い
住宅手当は給与の一部として一度支払われるため、一見すれば支給額が増えてお得なように感じますが、実は正反対。
住宅手当は所得に該当してしまうため、社会保険料や所得税など、すべてが高くなってしまうのです。
しかも住宅手当は家賃として消えてしまい手元には残りません。
税金だけが高くなり、手取りが増えないということになるため、結果として手取り額が少なくなってしまいます。
逆に、社宅を利用した場合では、給与はそのままでも家賃が安く抑えられます。
税金が増えることはないため、結果として手取り額が多くなるのです。
寮・社宅(給与天引き)と住宅手当の金額差
- 月収30万円
- 家賃7万円
- 1、借上社宅の会社負担4万のケース
- 2、家賃7万円の住宅手当4万のケース
社宅・住宅手当の比較表
1、社宅利用(給与天引き) | 2、住宅手当 | |
---|---|---|
年収 | 3,600,000 | 4,080,000 |
社会保険料 | -429,912 | -487,224 |
所得税(年額5%) | -76,500 | -92,800 |
住民税(年額10%) | -158,000 | -190,600 |
家賃負担 | -360,000 | -840,000 |
手取り額 | 2,575,588 | 2,469,376 |
例としてわかりやすい金額を明示しましたが、単純計算でも借上社宅の方が住宅手当より年間106,212円手取り額が多いことがわかります。
住宅手当をもらうことによって見た目の収入がアップしてしまい、各種税金が高くなってしまうため、手取り額に差が生まれるのです。
実質的には給料は増えてはいないのに、無駄に高い金額を支払うことになってしまうというのは、あまり喜ばしいことではありませんよね。
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長期借上の場合、退職の時に困ることも…
賃貸契約では、長期借上の契約として、長期間の賃貸契約を結ぶことがあります。
契約期間内に退去する場合には、違約金の支払い義務が発生したり、違約金を支払わないために住んでもいないのに家賃を支払わなければいけなかったり、いろいろと不便なところも出てきてしまうのです。
日常においては特に問題はないのですが、これが問題になるのは、退職に伴って社宅から引き上げる時です。
社宅ですので借主は会社となっていますが、退去時の違約金の支払い者まで会社という決まりがあるわけではありません。
例えば「違約金の支払いは実際に住んでいた者が行うこと」などと規定されていれば、退職に伴って違約金を支払わなければいけないかもしれないのです。
社宅制度を利用する際には、退去時の対応や入居時の敷金・礼金の支払いなど、厳密に双方の分担を確認しておくことが大切なのです。
企業側にもメリット大!社宅費用は経費計上で節税
社有社宅である場合には、税法上は社宅を会社の資産としてみなすため、固定資産税が掛かります。
さらに、社員から少額でも定額の賃貸料を受け取っているため、不動産所得として計上しなければいけなくなります。
当然所得であるからには、所得税を支払わなければいけないため、ここでも納める税金が増えてしまうこととなります。
そのため、社員の福利厚生のために行っているのに、逆に税金が高くなってしまうというジレンマが発生してしまうのです。
これが借上社宅の場合には、賃貸費用はすべて福利厚生費の名目で経費計上することができるため、社員のためにお金を使い、しかも節税にもなるということで、企業にとってもメリットが大きいものとなります。
住宅手当として社員に支払っている場合でも、人件費として経費計上できるため節税効果は期待できますが、それによって高くなる社会保険料の負担は、会社側にも発生してしまうため、節税効果は社宅制度の方が有利だと言えるでしょう。
大手調剤薬局の借上社宅制度
アイングループ
- ナショナル社員・広域エリア社員:家賃自己負担20%
- 狭域エリア社員:家賃自己負担40%
日本調剤
勤務地付近の借り上げ社宅に入居できる制度。引っ越し代や家電購入代の補助もあります。
- エリア勤務コース:家賃自己負担30%、別途上限2万円の住宅補助を支給
- 全国勤務コース:家賃自己負担20%、別途上限4万円の住宅補助を支給
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まとめ:住宅手当には意外なデメリット!制度があるのなら社宅の利用でお得に生活を!
住宅手当も社宅制度も、同様に社員のために用意されている福利厚生の一種ですが、意外な落とし穴が存在しています。
住宅手当にすれば直接お金を一時的に手に入れることはできますが、給与所得として計算されてしまうため、所得税などで税金がたくさん徴収されてしまうのです。
社宅制度では給与とは関係なく、低価格で住宅を利用できる制度となる為、税金が高くなることはありません。
現在は節税効果を考慮して借上社宅としていることが多く、利用する住居も自分で選択できることが大半であるため、あらかじめ定められている場所で生活しなければいけないようなデメリットもありません。
ちょっとした選択の違いで手取り金額に差が生まれてしまう部分ですので、社宅を選んでよりお得に生活していくようにしていきましょう。