調剤報酬のなかでも算定する要件が複雑な自家製剤加算。
チャンスが来るたびに、算定できるかどうか悩んでしまう薬剤師も多いのではないでしょうか?
今回は、自家製剤加算の算定について、具体的な例を交えて解説していきます。
あや
きよみ
あや
きよみ
そもそも自家製剤加算とは?
自家製剤加算とは、個々の患者に対して既存の医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づいて、剤型や用量変更のために何らかの措置を行った場合に算定される加算です。
すでに存在している規格で対応できる場合や、単に賦形剤を混ぜただけでは算定できません。
自家製剤加算を算定する時には、下記の項目についてチェックしておきましょう。
- 錠剤の半割で算定する場合、割線はあるか
- 他規格・他剤型で対応できる製品が薬価収載されていないか
- 後発品、もしくは先発品で代替できる製品が薬価収載されていないか
- 薬学的に考えて問題のないものであるか
- ほかに算定できる加算はないか
- 重複して加算の条件を満たしている場合、どちらの点数が高いか
嚥下困難加算・計量混合加算との取違に注意!
市販の医薬品に手を加えることで算定できる加算は、他にも存在しています。
自家製剤加算を算定するべきか、それとも違う加算を選択するべきなのかは、個々の症例ごとに異なります。
基本的に自家製剤加算は剤型の変更をした場合に算定されるものであるため、散剤同士を混合した場合や、水剤同士を混合した場合には計量混合加算となります。
これは、賦形剤を加えて飲みやすくしたとしても同様です。
また、嚥下するのが困難な患者に対して、錠剤の粉砕などの剤型変更を加えた場合では、その処方箋に記載されているすべての薬剤を嚥下可能な状態に調整したのであれば、嚥下困難加算の算定も可能となります。
嚥下困難加算は処方箋1枚に対して1回算定されるものですが、自家製剤加算はその剤ごとに算定されるものです。
つまり、嚥下困難加算を算定していても、頓服薬を粉砕したのであれば、そこでは自家製剤加算も算定可能となります。
加算の組み合わせは悩みやすい部分ですので、勘違いしないように整理しておきましょう。
自家製剤加算の算定ができるパターン例
具体的な自家製剤加算の算定ができる例をみていきましょう。
基本的な算定から確認していき、算定可能か悩んでしまうような例までチェックしていきます。
事例1
規格が一種類しか販売されていない錠剤で、医師の指示によって割線から半分に割り、分包した。
解説1
自家製剤加算の基本的な算定内容です。
薬局において最も出会う可能性が高い自家製剤加算だといえるでしょう。
通常は剤型を変更することで自家製剤加算を算定するものですが、割線がある錠剤の半割は例外です。
該当する規格や別剤型の販売が無い場合には算定可能です。
事例2
0.5mg、1mg、3mgの錠剤が販売されている錠剤において、医師の指示の下で3mg錠剤を割線から半割した。
解説2
この事例では、0.5mg、1mgの錠剤が販売されているため、自家製剤加算は算定できないと勘違いすることがあるため、注意しましょう。
自家製剤加算の算定要件は「分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない」であるため、1.5mgの錠剤が販売されていなければ、自家製剤加算の算定はできるのです。
これは平成26年度Q&Aでも、同様の回答が記載されています。
事例3
他剤型・他規格の販売がなく、割線が無い錠剤について、医師からの指示で半割するように処方されているが、割線が無い錠剤では含量の均一性がないことを疑義照会し、粉砕して対応した。
解説3
割線がない錠剤では、自家製剤加算の算定ができません。
これは、半割したときに含量の均一性が確保できないことを理由としています。
つまりは、その点を解消さえすれば、自家製剤加算の対象となるのです。
ただし、医師の指示が必要なものであるため、疑義照会の結果、そのまま半割で対応するように指示されてしまえば、算定はできません。
事例4
水剤と散剤の処方があり、医師から混合の指示が出ている。
解説4
小児科の処方箋で見ることがある例ですが、水剤と散剤を混合の指示であれば、剤型が変更されているために自家製剤加算の算定が可能です。
ただし、注意しなければいけないものもあり、散剤がドライシロップであったのなら、液剤とすることが容易で、特殊な技術を必要とは考えられないため、算定はできません。
事例5
3剤以上処方されている処方箋で、内服調剤料が算定されない剤において半割の指示があった。
割線があり、他規格・他剤型の販売はない錠剤である。
解説5
自家製剤加算は調剤料に関わる加算ではありますが、調剤料が算定されているかどうかは算定要件に関係ありません。
しっかりと条件をみたしていれば、調剤料の算定がなくても、自家製剤加算は算定可能です。
きよみ
あや
きよみ
あや
きよみ
自家製剤加算の算定ができないパターン例
剤型の変更や錠剤の半割をしていても、自家製剤加算の算定ができない例が存在します。
そのなかでも、算定について悩みやすいものを紹介いたします。
基本的なものについては、自家製剤加算が算定できる例も併せてご覧ください。
事例1
割線が無い錠剤で半割の指示が出されているが、疑義照会の結果、粉砕することとなった。なお、他剤型として散剤が販売されている。
解説1
自家製剤加算は、市販されている医薬品で対応できる場合には算定できません。
そのため、他規格・他剤型が販売されている医薬品では、該当する用量や剤型が存在しないかを、注意深く調べる必要があります。
粉砕の指示がある錠剤において、散剤が販売されているものでは、自家製剤加算は算定できません。
事例2
1mg錠の医薬品を割線で半割するように指示が出ている。その商品名における他規格・他剤型はないが、後発品で0.5mg錠が販売されている。
解説2
たとえその商品名では規格がなくとも、後発品や併売品で対応できる規格が存在している場合では、自家製剤加算の算定はできません。
事例3
腸溶性の顆粒を含んだOD錠について、粉砕の指示がされている。他剤型・他規格の販売はない。
解説3
自家製剤加算は、薬学的な観点から問題がないと判断されたものでしか算定はできません。
この事例では、腸溶性の顆粒が含まれているOD錠であるため、粉砕することで薬効が失活してしまう危険性があります。
たとえ疑義照会の結果、そのままの指示だったとしても、この例では算定はできません。
事例4
他規格・他剤型が販売されていない錠剤で、割線から半割の指示が出ている。また、処方箋全体に一包化の指示もでている。
解説4
自家製剤加算は、一包化加算と併算定はできません。
そのため、自家製剤加算と一包化加算、どちらかを選択して算定することになります。
自家製剤加算よりも一包化加算の点数が高いため、通常は一包化加算を算定することになるでしょう。
自家製剤加算の要件を満たしているとしても、この場合は算定はできません。
ただし、頓服薬や就寝前の医薬品について自家製剤加算の算定ができるのであれば、そちらで算定することは問題ありません。
あくまでも、同じ剤での併算定が不可というのがポイントです。
事例5
すべて朝食後の指示となっている処方箋で、散剤の混合指示と他規格・他剤型が販売されていない錠剤の半割の指示が出ている。
解説5
自家製剤加算は、計量混合加算との併算定はできません。
そのため、自家製剤加算と計量混合加算、どちらかを選択して算定する必要があります。
通常は自家製剤加算の点数が高いため、自家製剤加算を算定することになるでしょう。
なお、剤が異なればどちらの算定も可能となるため、たとえば朝食後に散剤の混合、夕食後に半割の指示であれば、双方で計量混合加算と自家製剤加算の算定が可能です。
きよみ
あや
まとめ:返礼を防ぐためにも、正しい知識で正しい算定を!
自家製剤加算について、具体的な事例を含めてご紹介しました。
自家製剤加算はいろいろな条件があるため、慣れていない医薬品ではベテラン薬剤師でも悩んでしまうこともあります。
調剤報酬の中でも高い点数の加算であるため、うっかり間違えて算定していて返礼されてしまっては、目も当てられません。
しっかりと把握して、間違いのない算定をしていきましょう。