2014年の調剤報酬改定で突然追加された妥結率の報告制度。
この制度は、薬価改訂において適正な薬価を定めるために活用されているものです。
しかしながら、突然始まった制度であって、現場で働いている薬剤師にはあまり深いかかわりがないので、よくわからないままにしている人もいるのではないでしょうか?
この記事では、妥結率に関してわかりやすくに解説していきます。
あや
きよみ
あや
きよみ
そもそも妥結率とは?妥結するってどういうこと?
医療機関と医薬品卸会社の間で、納入される商品の納入価格を正式に決定することを妥結するといいます。
医薬品は国が定めたそれぞれの薬価によって報酬算定されていますが、医療機関が医薬品卸会社から納入する際には、薬価よりも安い納入価で取引されているのです。
納入価と薬価の差はそのまま医療機関の利益となる為、医療機関は医薬品卸会社と交渉して、できるだけ安い価格で納入するように働きかけることが一般的です。
そして、医療機関が納入している商品のうち、納入価の妥結がどの程度の割合で行われているかを判断するのが妥結率です。
以下は医療機関ごとの妥結率になります。
H28.6 | H28.9 | H28.12 | H29.3 | |
病院(200床以上) | 19.7% | 95.3% | 45.5% | 99.2% |
その他病院 | 23.5% | 66.6% | 68.1% | 98.9% |
診療所 | 49.1% | 82.3% | 86.6% | 98.9% |
薬局(20店舗以上) | 6.3% | 96.4% | 52.0% | 93.5% |
その他薬局 | 17.2% | 98.0% | 85.7% | 98.7% |
昔は未妥結で商品を納品する不思議な取引が横行していた?
商品を納入するために、その納入価を決めるのは、至極当然のことです。
それなのに、なぜ今になって妥結率の報告が求められたのでしょうか?
実は、妥結率の報告が制度化される前には、妥結しないまま仮の納入価で取引が長期間行われることがありました。
通常は納入予定の商品は見積りを取り、お互いに納得した形で取引を行うものですが、医療業界は命にかかわる業種であるため、緊急時には仮の納入価で商品を納品し、後から正式に取引を定める場合があります。
これを逆手に取り、正式に納入価を決定しないまま、医薬品を購入し続ける例があったのです。
その理由は、納入価をより安く妥結するために他なりません。
卸会社は、一定数量の販売が予想できる商品は、納入価を安く設定するようになります。
妥結の時期が早ければ、卸会社はどの程度の取引が行われるか判断できない為、割高の納入価を提示することになります。
つまり、妥結する時期を遅くすれば、それだけ安く納入できるということになり、余剰に支払った金額を払い戻ししてもらうことができるのです。
あや
きよみ
妥結率を報告する理由の表と裏
国が妥結率の報告を求めたことには、実は「表と裏」の理由が存在します。
妥結してから取引を行うことは当たり前のことではあるものの、それまでの医療業界の通例を打破することになります。
この制度を定めた理由についてみていきましょう。
表の理由は「薬価改正へ反映する為」
薬価改正が行われる時には、前年の9月に取引価格の調査が行われます。
取引価格は一般的に薬価よりも低く設定されているため、薬価改正は実際の流通状況を鑑みて、取引価格と薬価の乖離を是正し、適正な薬価に引き下げる役割を持っているのです。
このことからわかる通り、前年9月の時点で取引価格が決定していなければ、薬価改正のための調査ができません。
妥結率を報告させることによって妥結を促進し、取引価格の調査が円滑に行われるようにするという目的があります。
裏の理由は「大手調剤薬局グループの利益を削る為」
妥結を先延ばしにしているのは、大手調剤薬局グループや大手病院がほとんどです。
取引量が大きいため卸会社としても優遇せざるを得ず、本来であれば妥結してもらうことが当然であるのに、それを強く求めることができないのです。
妥結を求めて取引停止されてしまっては、利益が得るどころの話ではありません。
では、なぜ大手の会社は妥結を先延ばしにするのでしょう。
もちろんそれは、取引価格をできるだけ低く抑えるためです。
取引価格を低く抑えれば、それだけ薬価差益を得ることができます。
ある大手調剤薬局グループの代表が年収を公表し、強く非難されたことは、まだ記憶に新しいものだと思います。
政府の方針は大手調剤グループを良しとはしておらず、それらの利益を削る為という裏の目的もある制度だといえるでしょう。
あや
きよみ
あや
妥結率が低い保険薬局のペナルティとは?
妥結率が低い調剤薬局には、ペナルティが課せられます。
もちろんそれは、薬価差益を得ようとしているものと考えられるため、それ以外の利益を削るというものに行きつきます。
調剤基本料の減算
基本料 | 妥結50%以下 |
調剤基本料1:41点 | 調剤基本料1:21点 |
基本料 | 妥結50%以下 |
調剤基本料2:25点 | 調剤基本料2:13点 |
(処方箋受付4000枚/月かつ集中率70%超え。または、処方箋受付2000枚/月かつ集中率85%超え。または、特定の医療機関の処方箋の受付回数4000枚/月超え)
基本料 | 妥結50%以下 |
調剤基本料3イ:20点 | 特別調剤基本料:10点 |
(同一法人全処方箋受付4万回~40万回未満)
基本料 | 妥結50%以下 |
調剤基本料3ロ:15点 | 特別調剤基本料:10点 |
(同一法人全処方箋受付40万回超)
調剤基本料は、処方箋の受付回数や集中率などによって、算定できる点数が変わります。
通常は調剤基本料1~3が算定されるものですが、妥結率が50%を下回っている場合、調剤基本料を50%減算とするか、もしくは特別調剤基本料を算定することになります。
妥結率が低い医療機関への救済措置は?
後発医薬品の使用率が低い場合にも調剤報酬の減点がありますが、やむを得ない事情に対しての救済措置が用意されています。
たとえば医師が変更不可としている処方箋が100%を占めている調剤薬局では、後発医薬品を調剤することは不可能であり、調剤薬局の努力でどうにかなるものではないためです。
では、妥結率が低い場合での減点に対しては、救済措置があるのでしょうか。
残念ながら、妥結率が低い場合の減点には、救済措置はありません。
妥結率が低いことにやむを得ない事情があるとは考えにくいものであり、50%という比較的低い基準にも到達していないとなれば、救済する必要はないものでしょう。
きよみ
あや
まとめ:高い妥結率を求めるのは当然のこと!公明正大な取引を!
妥結とは、医薬品卸会社と医療機関において、医薬品や医療機器などを納入するための納入価格を決定することを言います。
取引する上で価格を決定してから行うというのは、事業を行うためには当然のことです。
医療機関に高い妥結率を求めるのは、当たり前のことなのです。
あえて妥結させずに自社の利益を増やそうとするのは、限りなくブラックに近いグレーな取引だといえるでしょう。
妥結率が低い場合には、それ相応の減点措置が取られます。
公明正大な取引を行い、胸を張って発表できる事業を行っていただきたいものです。