ジェネリック医薬品のなかでも異質な存在、それがオーソライズドジェネリック(以下AG)です。
調剤薬局はジェネリックの使用を促進するように政府から強いられ、患者との間で板挟み状態となっています。
そんな状況を良い方向に転換してくれる可能性を秘めているのが「AG」。
AGの一覧表と薬価について確認し、その活用方法についても紹介します。
あや
きよみ
あや
きよみ
オーソライズドジェネリック(AG)と通常の後発品との相違点は?
まずはAGとはどんなものなのかを確認し、通常のジェネリック医薬品との違いについてチェックしていきましょう。
AGと通常のジェネリック医薬品との違いは、大きく分けて二つあります。
製剤的な違いと、行政的な取り扱いの違いです。それぞれについて解説します。
- 成分(添加物)の違い
- 販売時期の違い
- 価格の違い
成分(添加物)の違い
通常のジェネリック医薬品は、主成分は先発医薬品と同等であり、生物学的な同等性が確保されたものです。
ただし、添加剤などの主成分以外の部分は先発医薬品とは異なり、製剤方法も異なる場合がほとんどです。
AGの場合は主成分だけではなく、添加剤や製剤方法まで同一のものとなっているため、先発医薬品と完全に同等のものとなっています。
製品によっては、工場や製造ラインまで同一となっているのです。
販売時期の違い
AGは先発医薬品の販売会社から認可されて製造するため、特許期間内であっても再審査期間が終了していれば製造販売の申請を行うことができます。
通常のジェネリック医薬品では特許期間と再審査期間の双方が終了しなければ申請できないため、その時間差の分だけAGの発売時期が早くなるのです。
価格の違い
ジェネリック医薬品は多数の製品の販売時期が重なってしまうことがありますが、同時に収載されるジェネリック医薬品が10種類以上だった場合には、価格は先発品の4割とされるルールがあります。
AGの場合は、その申請の性質上、販売時期が重なることがありません。
そのため、AGの発売当初の価格は、先発医薬品の5割の設定となるのです。
AGの発売は先発品販売会社の関連企業(子会社)が主流
AGを販売するためには、先発医薬品を販売している企業から許可を得なければいけません。
AGは販売時期も早く、成分・製造工程も先発医薬品と同等のものであるため、医師や患者から選択されることが多く、遅れて販売される他社のジェネリック医薬品よりも大きなシェアを獲得することが大半です。
そのため、その大きな利益のチャンスをみすみす他社にプレゼントする企業は稀となり、そのほとんどが自社の関連会社(子会社)が製造販売を行っています。
こういった場合、いままで利用されていた工場・製造ラインまで同一のものを使用できるため、より高品質で安定した供給が実現できるのです。
あや
きよみ
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AGの一覧表と薬価
現在販売されているAGの一覧と、その薬価についてまとめました。
AGの一覧表
AG | 先発品 |
フェキソフェナジン(日医工) | アレグラ(サノフィ) |
バルサルタン(サンド) | ディオバン(ノバルディス) |
ゾレドロン酸(サンド) | ゾメタ(ノバルディス) |
カンデサルタン(あるか製薬) | ブロプレス(武田製薬) |
レボフロキサシン(第一三共エスファ) | クラビット(第一三共) |
クロピドグレル(日医工) | プラビックス(サノフィ) |
アムバロ(サンド) | エックスフォージ(ノバルティス) |
カムシア(あすか製薬) | ユニシア(武田薬品) |
バルヒディオ(サンド) | コディオ(ノバルティス) |
カデチア(あすか製薬) | エカード(武田薬品) |
モンテルカスト(キョーリンリメディオ) | シングレア、キプレス(MSD、杏林製薬) |
バラシクロビル(アスペン) | バルトレックス(GSK) |
パロキセチン(アスペン) | パキシル(GSK) |
スマトリプタン(アスペン) | イミグラン(GSK) |
ベポタスチン(田辺製薬販売) | タリオン(田辺三菱) |
ホリナート(岡山大鵬薬品) | ロイコボリン、ユーゼル(ファイザー、大鵬薬品) |
オルメサルタン(第一三共エスファ) | オルメテック(第一三共) |
オルアゼ(第一三共エスファ) | レザルタスイ(第一三共) |
テルミサルタン(第一三共エスファ) | ミカルディス(日本BI、アステラス) |
テラムロ(第一三共エスファ) | ミカムロ(日本BI、アステラス) |
テルチア(第一三共エスファ) | ミコンビ(日本BI、アステラス) |
ロスバスタチン(第一三共エスファ) | クレストール(アストラゼネカ、塩野義製薬) |
シタフロキサシン(第一三共エスファ) | グレースビット(第一三共) |
レバミピド(大塚製薬工場) | ムコスタ(大塚製薬) |
ジエノゲスト(持田製薬販売) | ディナゲスト(持田製薬) |
エスワンタイホウ配OD錠(岡山大鵬薬品) | ティーエスワン(大鵬薬品) |
現在販売されているAGには、通常のジェネリック医薬品も多数販売されているものばかりです。
それでも、先発品と同等の製品という点と、販売時期が早いという点で、他社よりもはるかに大きなシェアを確保しています。
AGの薬価
AG | 薬価 |
フェキソフェナジン(日医工) | 30mg23.4円/60mg30円 |
バルサルタン(サンド) | 20mg9.09円/40mg16.6円/80mg31.2円/160mg42.9円 |
ゾレドロン酸(サンド) | 4mg5ml11329円 |
カンデサルタン(あるか製薬) | 2mg15.3円/4mg31円/8mg60.2円/12mg69円 |
レボフロキサシン(第一三共エスファ) | 250mg77.1円/500mg135.6円/細粒10%51.2円 |
クロピドグレル(日医工) | 25mg29円/75mg70.2円 |
アムバロ(サンド) | 34.2円 |
カムシア(あすか製薬) | LD49.9円/HG49.1円 |
バルヒディオ(サンド) | MD43.3円/EX43.8円 |
カデチア(あすか製薬) | LD28.6円/HG54.1円 |
モンテルカスト(キョーリンリメディオ) | 5mg62.9円/10mg83.5円 |
バラシクロビル(アスペン) | 顆粒50%203.9円/500mg155.4円 |
パロキセチン(アスペン) | 5mg12.6円/10mg30.2円/20mg41円 |
スマトリプタン(アスペン) | 50mg275.1円 |
ベポタスチン(田辺製薬販売) | 未発売 |
ホリナート(岡山大鵬薬品) | 25mg838.9円 |
オルメサルタン(第一三共エスファ) | 5mg10.7円/10mg20.4円/20mg39円/40mg57.3円 |
オルアゼ(第一三共エスファ) | 未発売 |
テルミサルタン(第一三共エスファ) | 20mg19.9円/40mg37.5円/80mg56.3円 |
テラムロ(第一三共エスファ) | AP47.5円/BP72円 |
テルチア(第一三共エスファ) | AP49.6円/BP72円 |
ロスバスタチン(第一三共エスファ) | 2.5mg21.7円/5mg41.4円/OD2.5mg21.7円/OD5mg41.4円 |
シタフロキサシン(第一三共エスファ) | 未発売 |
レバミピド(大塚製薬工場) | 100mg9.9円 |
ジエノゲスト(持田製薬販売) | 1mg158.5円/OD1mg158.5円 |
エスワンタイホウ配OD錠(岡山大鵬薬品) | T20 251.8円/T25mg344.8円 |
AGが発売された当初の薬価は、通常先発医薬品の薬価の0.5倍となります。
ただし、薬価は2年に1度の改訂が行われ、卸会社と医療機関で実際に取引されている価格が反映されることで、改訂の度に低くなっていきます。
そのため、過去に発売されたAGほど、薬価は低くなっているのです。
AGの患者ニーズや薬局採用率は?
AGはその性質上、多くの患者から選択されています。
患者がジェネリック医薬品を拒否する理由の一つとして、「ジェネリック医薬品は信用できない」という漠然とした不安があります。
実際にジェネリック医薬品を使用したわけでもないのに、ジェネリック医薬品は効果が悪い、品質が悪い、副作用が出る、といった既成概念を持っているのです。
これは昨今加熱しているメディアによる医療制度批判により、植え付けられたものと考えられます。
一部の極端な例が、まるですべてに当てはまるように報道されている現状で、ジェネリック医薬品という言葉だけで拒絶反応を起こしている患者もいるのです。
そんななか、AGはその漠然とした不安を一掃する根拠をもったジェネリック医薬品として、胸を張ってオススメできるものとなっています。
AGは多くの調剤薬局で採用され、大きなシェアを獲得するに至ったのです。
ジェネリック医薬品を全面的に不可にしている病院・診療所においても、AGのみは例外とされることもあり、その採用率は限りなく高くなっています。
増加傾向のAGが「薬価制度が対応できていない」と言われる理由
AGを採用する医療機関が大多数となっている現状で、問題となっているポイントが薬価です。
ジェネリック医薬品の薬価収載は年2回(6月・12月)となりますが、AGが6月に薬価収載され、他社が販売するジェネリック医薬品が12月に薬価収載される場合を考えてみましょう。
翌年の4月に薬価改定がある場合、その年の9月に実際に取引されている価格が調査されます。
その時、AGは販売されていても、その他のジェネリック医薬品は販売されていない状況となってしまうのです。
これでは、実際の取引価格の調査ができるのはAGのみで、通常のジェネリック医薬品については調査されないままに薬価改定が行われることになってしまいます。
AGの場合、その販売時期の違いから、先発医薬品の0.5倍の価格となっていますが、通常のジェネリック医薬品の場合、10種類以上が同時に薬価収載されれば、先発医薬品の0.4倍の価格となります。
実際の取引価格がどうなるかはわかりませんが、AGよりも高い価格で取引されることはありえません。
そのため、AGの価格に合わせて薬価改定されてしまえば、そのほかのジェネリック医薬品の薬価が高くなる可能性もあるのです。
今後はAGの価格を通常のジェネリック医薬品の価格に合わせる改訂となる?
現在の日本は医療費の高騰が問題視され、いかに医療費を下げるかを常に模索しています。
そんななか、医療費の多くを占める医薬品の費用を下げるために、ジェネリック医薬品が注目され続けています。
AGと通常のジェネリック医薬品の薬価収載時期の違いにより、一部の後発品の薬価が上昇するというのは、決して好ましいものではありません。
そのため、新たな制度として、あらかじめ販売されているAGの価格を、薬価改定に合わせて通常のジェネリック医薬品の価格に合わせて低くするという案が出されています。
市場調査を行うことはできないため、機械的に計算した数値となりますが、これによって他の後発品の薬価が高くなることは避けられます。
ただし、AGの販売会社としては、販売後1年も経過せずに大幅に利益が減ってしまうこととなるため、今後のAGへの参入には慎重にならざるを得ない部分も出てくるでしょう。
きよみ
あや
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患者にAGを勧める会話のポイント
AGは患者が持つジェネリック医薬品への不安・不満を解消できるものとして、大いに活躍するものです。
政府としては医療費を削減する効果が、調剤薬局としてはジェネリック比率を上昇させて調剤報酬を得る効果が期待できます。
三者ともにメリットがあるAGですが、その勧め方間違えてしまえば、AGの良さがうまく伝わらず、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。
ここで、AGを勧める会話のポイントをチェックしておきましょう。
- 普通の後発品との違いを解説
- 先発品との同等性をアピール
- 先発品販売会社との関連性をアピール
まずは患者の持っている「ジェネリック医薬品は悪いもの」という既成概念を崩さなければいけません。
ですので、初めからジェネリック医薬品にしませんかとやみくもに伝えるのは避けましょう。
いつも使っていただいている医薬品とまったく同じ商品が安い価格で販売されたことを伝え、通常のジェネリック医薬品とは異なり、添加剤や製造工程まですべて同じだと、メリットを伝えましょう。
ものによっては、工場まで同じだと伝えられればなお良いです。
先発医薬品の子会社が販売しているため、品質面でも安心できることを伝えれば、悪い先入観を消すことができるでしょう。
話を聞く気がない患者には、先発医薬品の薬袋にAGについての説明文を添付し、目に止まるように配慮することで、AGに関する認知度を上げる努力をしていきましょう。
まとめ:AGは政府・患者・医療機関、すべてに良い効果をもたらす優良商品
AGは先発医薬品とまったく同等の製品です。
そのため、患者や医師から選択されることが多く、ジェネリック医薬品のなかでも大きなシェアを持っています。
他のジェネリック医薬品よりもいくらか薬価が高くなりますが、今後の薬価改訂によってその差が是正されれば、医療費削減にも貢献することでしょう。
調剤薬局としては、薬剤費としての収益は減ってしまいますが、後発医薬品調剤体制加算を算定できることで、少なくなった薬剤費以上の収益を得ることもできます。
AGをうまく活用し、調剤報酬マイナス改定を乗り越えていきましょう。