欧米では多くの国が導入しているリフィル処方箋ですが、日本ではいまだに導入さていません。
そもそも日本では導入されていないので、その存在すら知らない人もいるかもしれませんね。
今回はリフィル処方箋の概要について解説し、そのメリットとデメリットについて考えていきましょう。
あや
きよみ
あや
きよみ
そもそもリフィル処方箋とは?
リフィル処方箋とは、定められた期間内で反復して使用できる処方箋を指します。
医師の診察を受けて処方箋を発行してもらうことは変わりませんが、その後は医師の診察を受けることなく処方箋を再使用し、医療用医薬品を調剤してもらうことができます。
慢性疾患で安定した状態にあり、診察や検査などの必要性が少ない患者に対して活用されるものとなっています。
患者の状態によって医師が再使用可能な期間を任意に設定し、薬剤師が調剤時に患者をしっかりとフォローすることで成り立つ制度です。
分割調剤との違いとは?
似たような制度として「分割調剤」が存在しますが、これは似て非なる制度です。
分割調剤とは、14日を超える日数が書かれた処方箋について、保存が困難な医薬品であったり、後発医薬品を初めて使用したりする際に活用できる制度です。
分割調剤した場合には、処方箋は患者に返し、その旨を調剤録として作成・保管します。
もっとも、分割調剤という制度自体は存在するものの、一般的に活用されている場面は少ないのが現状です。
それを受けて、2018年度の調剤報酬改定によって分割調剤の手続き等が緩和され、政府は活用の促進を図っています。
先進国の導入状況
アメリカ | 導入 |
イギリス | 導入 |
オーストラリア | 導入 |
カナダ | 導入 |
フランス | 導入 |
ドイツ | 未導入 |
リフィル処方箋は、欧米の国々では一般的な制度です。
そもそも諸外国でリフィル処方箋が一般的になったのは、その健康保険制度の成り立ちに起因します。
日本では国民皆保険制度であり、収入に関係なく誰でも医療を受けることができます。
対して諸外国は、健康保険も個人的に加入するものであり、収入が低い人では未加入であることもあります。
医師の診察を受けることは多額な金額が必要となるため、症状が安定している場合には医薬品を継続するだけでよいリフィル処方箋が有効な手段となるのです。
あや
きよみ
リフィル処方箋が導入されれば薬剤師の職能拡大へ
諸外国の薬剤師に対する信頼感が高いのは、リフィル処方箋の貢献が大きいと言われています。
医師の診察を受けないため、調剤時に薬剤師と会話をし、病状の変化や副作用の有無などのほか、体調不良の相談なども行います。
場合によっては受診勧告を実施するため、薬剤師は健康を守る医療人としての地位を確立させているのです。
日本でもリフィル処方箋が実施されれば、薬剤師の職能は大きく拡大されることになるでしょう。
導入のメリットとは?
リフィル処方箋を導入することで、多くのメリットが期待できます。
まずは安定した慢性疾患に関わる診察時間が削減され、医師の負担を大きく減らすことができると言われています。
診察に関わる医療費も削減できるため、政府の財政を圧迫している現状を改善することもできるでしょう。
患者にとっても、体調変化もないのに定時薬もらうためだけに受ける診察について、時間コストを減らすことができます。
導入のデメリットとは?
リフィル処方箋を導入することにも、デメリットが存在します。
まずは、その導入に向けて現状の社会保険制度を大きく改革しなければいけません。
その改革にかかるコストは莫大なものとなるでしょう。
また、医師の診察を受ける人が減ることで、医療機関の収益も大きく減少することになります。
特に、安定期の患者を多く抱えている地方の診療所では、厳しいものとなる可能性があります。
医師の診察を受けないことで、重大な病状の変化が見逃されてしまい、患者の健康に不利益が起きる可能性もあるでしょう。
未だにリフィル処方箋が導入されない理由とは?
患者や薬剤師にとっては喜ばしいリフィル処方箋ですが、導入される予定は現在ありません。
何度か審議はされていますが、「深く検討した後、速やかに回答を出す」という何の意味もない審議結果が出されたのみです。
導入が見送られている理由は、大きく下記の二つです。
- 薬剤師の能力不足
- 医師会の反発
審議で言われていることの一つに、薬剤師の能力不足があります。
リフィル処方箋はその性質上、薬剤師の能力によって患者の状態を把握することが求められます。
疾患に対する深い知見を持ち、医薬品を通して患者の状態を正確にモニタリングする能力が必要となりますが、その能力を持っている薬剤師がどれだけ存在しているでしょうか?
そして、その薬剤師としての能力は、どれだけ医師や他の医療者、患者に認知されているでしょうか?
中医協での議論においても、医師委員からは必要性が感じない、現実的ではないと言う否定的な意見が出されています。
まずは薬剤師がリフィル処方箋に対応できるという姿を見せなければ、リフィル処方箋の実現は難しいでしょう。
きよみ
あや
きよみ
見出し4:まとめ:リフィル処方箋は薬剤師に大きなメリットと大きな責任を背負わせる諸刃の剣
リフィル処方箋があれば一枚の処方箋で複数回の調剤が可能で、時間的にも医療費的にも、大きなメリットを生むことでしょう。
ただし、そのメリットを最大限に活かすには、薬剤師の正確な患者モニタリングが必要になります。
薬剤師の対応に誤りがあれば、患者の健康が損なわれてしまうのです。
リフィル処方箋が現状実施されていないのは、医師の反発と薬剤師の能力不足が原因です。
まずは医師や患者、他医療従事者に対して、薬剤師の能力について認めてもらう必要があります。
導入を望む声を上げるだけではなく、リフィル処方箋を扱うに足る薬剤師となるために研鑽をつみ、その能力をしっかりと伝えていくことに勤めましょう。