クリニック・診療所などの小規模の医療施設を転職先として検討している場合、きちんと内情をチェックすることが重要です。
アットホームで働きやすい環境という一般論をそのまま鵜呑みにしての転職は、実情との違いにがっかりしてしまうかもしれません。
この記事では、希少求人と言われるクリニック・診療所で働くことの実態についてお話していきます。
あや
きよみ
モンブラン
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病床19以下の医療施設がクリニック(診療所)
クリニックと診療所は同様の意味として用いられ、そもそも診療所とは、病床数が19以下の医療施設を指します。
緊急外来の受付や夜勤なども滅多になく、決まった時間で働くことができるのは大きな魅力の一つです。
ただし、クリニックでは常に一定の医薬品にしか触れる機会はないため、薬剤師としての経験・知識を伸ばすことには向きません。
看護師の人材確保が難しいため無床化のクリニックが多い
病床を維持するためには、夜間も働くことのできる看護師の確保が必須事項です。
シフト制でローテーションしていく必要がありますので、当然、看護師の人数をそろえることが必要になります。
ですが、看護師の募集は容易ではありません。クリニックで働くことを希望する看護師の数自体が少なく、夜勤などを嫌っている場合がほとんどなのです。
看護師の確保が出来なければ、病床を維持することはできません。
そのため、病床を持たない無床診療所が全体の約9割を占める状況となっているのです。
無床診療所が多いということは、院外処方のケースが多いので、そもそもの求人数が少なく希少求人と言われる所以になります。
実はテレビ局内には薬剤師が常駐する診療所もある
薬剤師が働く職場のなかでも、かなり変わり種の分類となりますが、実はテレビ局内で薬剤師が働くことも可能なのです。
大手テレビ局内には、薬剤師が常駐している診療所が設置されており、そこのスタッフとして勤務できれば、テレビ局内での勤務が可能になります。
不規則な生活になりがちなテレビマンの健康を支える役割を持ち、忙しい合間でも一通りの治療を受けられるテレビ局内の診療所は、とても重宝されています。
院内処方を行う必要があるために、テレビ局内の診療所では薬剤師の勤務が不可欠なのです。
局内に診療所を持つテレビ局
- 日本テレビ(閉院)
- テレビ朝日
- フジテレビ
- TBSテレビ
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きよみ
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院内処方だとしても調剤薬局業務と何ら変わりはない
クリニックにおける薬剤師の業務は、実は調剤薬局での業務と大きな違いはありません。
病床を用意しておらず、入院患者を持たないタイプのクリニックでは、病棟業務も存在しないため、調剤薬局となんら変わりない業務に従事することになります。
医師の指示書をもとに調剤を行い、患者に投薬を行って、そこから得た情報を薬歴に記載していくため、調剤薬局からの転職では、大きな変化は感じないでしょう。
外来と病棟を兼務することが多い
クリニックでは薬剤師の人数が極めて少数であるため、すべての業務を兼任していくことになります。
病床を持っているクリニックでは、外来業務と病棟業務、双方を担当しなければいけません。
病床数は少ないため、病棟業務だけではそれほど多忙にはなりませんが、在庫管理や事務作業、外来業務などを合わせて行っていくことから、実際には想定以上に忙しいということも多くあるのです。
調剤薬局と比べ医師・看護師・患者との距離が近い
調剤薬局での薬剤師は、患者との距離は比較的近くなりますが、医師や看護師とは距離が離れてしまいがちです。
クリニックの薬剤師では、調剤薬局での薬剤師に比べて、医師・看護師と非常に近い距離で働くことになります。
クリニックのスタッフであるということで、患者からの信頼もおのずと厚くなり、距離も近いものとなるでしょう。
これらの近い距離がメリットとして働くこともありますが、逆に足かせとなってしまう場合もあります。
薬剤師の観点としては避けるべき治療だとしても、医師に遠慮してしまって意見できない状況であったり、看護師から薬剤師の範疇ではない業務を依頼されたり、距離感が原因の問題も生まれる可能性があるのです。
院内処方にこだわるクリニックで働く薬剤師の給料は低い!
クリニックで働く薬剤師の給料は、薬剤師の平均年収から見ても明らかに低い水準となっています。
薬剤師が常駐することで薬剤管理指導料などの点数を算定できるというメリットはありますが、薬剤師の給料を補てんできるほどの収益にはつながりません。
薬価改定のたびに薬価差益は少なくなり、処方箋料などの利益に直結する部分が得られない院内処方のクリニックでは、経営状況が厳しいものである場合も多く、年収や賞与は薬剤師の平均よりも100万円以上低い傾向となってしまうのです。
クリニックで働く薬剤師の年収
- 平均年収350万〜400万円前後
- 賞与:60万円前後
クリニックの経営状態によって賞与額は大きく変わる
賞与は労働基準法などの法律で決められたものではなく、あくまでの普段の働きを考慮して臨時の報酬を与えるという名目のものです。
ですので、法人としてのクリニック経営がうまく回っているのなら賞与に反映される金額も大きくなりますが、経営状態が厳しい状況にあるクリニックでは、賞与といっても大きな金額は期待できません。
あらかじめ契約時に明記された金額に関しては、企業側の都合で減額することはできませんが、明確な記載がない場合には注意しなければいけないでしょう。
あや
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わざわざクリニックへ転職する必要性・メリットはない
クリニックからの薬剤師求人は数が少なく、見つけることが難しい希少な転職先です。
ただし、このようにクリニックの薬剤師求人が希少と言われるのは、待遇が良いとか働きやすいなどという理由ではなく、そもそも雇用人数が少ないためなのです。
日本における分業率が70%を超え、院内処方としているクリニックが少数であることや、医師の監督の下で看護師が医薬品の払い出しをしているという点から、薬剤師がクリニックの現場で求められていないという実情もあります。
さらに、経営面で有利になる院外処方をせずに患者ファーストで対応している分、職員の待遇も決して良くはありません。
余裕のある人数を雇うことも難しいため、突発的な早退や休暇の取得が困難であり、小さい子供を持つ薬剤師にとっては大きなデメリットとなるでしょう。
待遇は良いものではなく、働きやすいかどうかも未知数なクリニックへの転職は、よほどの信念をもってクリニックで働きたい薬剤師の他には、メリットはあまり見当たらないものなのです。
まとめ:クリニックの仕事は噂よりも大変!転職は計画的に!
クリニックは薬剤師も働きやすく、待遇も良い。そんな噂が流れていますが、それは一部のクリニックです。
通常のクリニックでは薬剤師の需要がなく、需要がないために求人は非常に少数。
年収や休暇などの待遇は、決して恵まれているとは言えません。
平均年収よりも低く、医師との距離感が近すぎることで働きづらく感じてしまうこともあるでしょう。
患者は医師との関係を重要視しているため、薬剤師はただの薬を渡す人としか認識されないこともあります。
クリニックの利点は、規定された休日は確実に取れることと、営業時間外の勤務が少ない点ですが、突発的な早退などの柔軟な対応は難しいというデメリットもあります。
自分の理想とする働き方と照らし合わせ、クリニックでの勤務が本当に合っているのか、転職前にしっかりと確認しておきましょう。
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